第42話
結局、何だか分からないままでは困るので、その後三人から説明を聞いた。
ちょうどログインしたアンナも一緒にだ。
「交流戦ってのはね。つまり、ランキング関係ない戦いを知り合いのクランとかとするんだけど」
クラン同士で戦う公式コンテンツは今のところ攻城戦しかない。
だけど闘技場のシステムではプレイヤー同士で戦うことが出来る。
規模は個人戦から、クランの最大人数である50対50まで任意に選べるらしい。
更に対戦の設定をいじれば、クラン対クランも出来るし、クラン関係なく混じって戦うこともできるらしい。
よくやるのは知り合い同士で戦ったりするものらしいけど、野良戦と言って、全く知らない人が集まって戦うものまであるのだとか。
ひとまず色んな人と戦えると言うのは分かった。
「でも、それとクランのメンバー募集と何が関係あるの?」
「だからね。ただ、プレイヤー募集しますって言ってもなかなか来ないと思うんだよね。俺たちを知らないから。でも試しに戦ってみたら、少なくとも少しは興味持ってもらえるじゃない?」
「あ、なるほどね」
「俺たちも相手も、どのくらいの実力があるのか分かる。最初はクラン同士で戦ってさ。その後ごちゃ混ぜになって戦ってみたら、合併した後の雰囲気も掴めるでしょ?」
つまりただ言葉で呼ぶだけじゃなく、実際の関わりを持ってみようということか。
確かにそれならこっちもあっちも安心するかもしれない。
「まずは交流戦募集を宣伝しないと、確かそういう掲示板があるんだよね?」
「そうですね。こちらからコンタクトを取ることもできますが、私たちの募集は少し特殊なので、新しく立てた方がいいかもしれません」
掲示板というのはゲーム内でクランもしくは個人が書き込み出来る場所で、話題によって雑談板とか募集板とか名前がついている。
クランメンバーの募集も、セシルが定期的にメンバー募集板に書き込んでくれているらしい。
残念ながら今まで募集に応募が来たことはないらしいけど、いつか誰かの目に触れることがあるかもしれないので、継続は力なりだ。
それとは別の話で、今回は交流戦募集板というものに書き込むらしい。
内容は、『メンバーが十人前後であること』、『どこか合併先を探していること』この二つだ。
メンバーが少なくて、攻城戦は難しいけれど対人戦をやりたいというクランはそれなりにあるらしい。
実際に、セシルが書き込む前に他のクランの書き込みを見てみたところ、少なくない頻度で募集があるのだとか。
ただ、こちらと同じ様な合併を考えてるという書き込みはなかったらしい。
カインの話によると、クランメンバーが脱退や引退で減ってしまって、新しくメンバーを募集するよりも合併を考えるクランは結構多いのだとか。
意外とそういうクランの中には古参の人たちも含まれるということだった。
「とりあえず。書き込んでみて、反応があれば直接やり取りだな。まぁ、これとは別に個人の募集の方も引き続き続ける予定だし。と、いうことで。メンバーが集まるまでは攻城戦は少し休憩かな?」
「そうですね。下手に攻城戦に挑んで、レーティングを下げてしまってもあまり良くありませんし。ただ、あまり長い期間参加しないと、それだけでレーティングが下がっていきますからね」
とりあえずの準備はできた様だし、私も交流戦の目的と内容は分かったので、話題は別のことに変わった。
クランクエストを貼っていた【魔血】の募集についてだ。
「今のところ、二つだけ納品がありました」
ハドラーが代表して教えてくれた。
一体今までにどれだけの数がドロップされているのか分からないので、この二つという数が多いのか少ないのかは分からない。
だけれど、これで少なくとも二回は効果を試すことができるということだ。
前回はぶっつけ本番で、運良く勝つことができたけれど、明確な戦略に組み込むためにはある程度の効果を理解しないといけない。
少なくとも切り札として、一個は必ず持っておくとして、もう一個はどこかで試してみたいところだ。
「前に使った時はセシルが真っ黒い竜みたいな身体になったの。効果にある『魔神』っていうから、てっきりあのレアボスみたいになるのかと思ってたんだけど」
「うん。ドラゴニュートの特有スキル【ブレス】も使えたし、使った後の変化はアバター依存な可能性が高いね」
「だとすると、次に試してみるのは、セシル以外の方がいいと思うのよね。誰にするかだけれど……」
「はいはい! 僕! 僕がやってみたいな」
カインが珍しく自己主張してきた。
どうも前回アーサーと一緒になってから、以前より積極的な気がする。
「なんだか分からないけど、強くなれるならわたしもやってみたいね! サラちゃん! カインよりわたしの方が適任じゃあないかい?」
「え? えっーっと、うん……カインの方が……いいかな?」
今回のお試しでは、どういう変化があるのか色々と使用した本人も確認してもらう必要がある。
申し訳ないけどアンナだと、こちらの聞きたいことが全部聞けるか不安が残るところだ。
「うぅ……サラちゃんがそういうなら仕方ないね……でも、次使う時はわたしに任せておくれよ?」
「う、うん。そうだね。あ、ほら! アンナさんには本番で! 本番で使ってもらうのがいいかなーって!」
落ち込んだ様子のアンナだっただけれど、私のこの言葉で輝いた目に変わった。
「ほんとかい!? そうだね! わたしゃ本番に強い女だからね! この前は汚い手にやられてしまったけど、今度はどんな相手だってギャフンと言わせてやるよ!!」
「あはは。頼りにしてるね」
そんな話をしている横で、セシルが先ほどから何か中空を眺めてブツブツ話をしていた。
どうやら自分の画面を覗いているらしい。
「みんな。聞いてくれ。早速だけど、交流戦の募集に応募があった。相手が言うにはいつでも出来るらしい」
先ほど書き込んだばかりの募集に、もう返事が来たらしい。
その後ギルバートたちに連絡をとってから相手と日程を話した結果、なんと明日の夜に早速初めての交流戦が開催されることになった。
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