第3話 馬鹿者

「よし! もういいぞ!」


「ありがとうございます!」


「補習のテストで一発で満点を取るならテストでも取って欲しいものだけどな!」


「はは.......精進します」


 そう言って俺は教室を出る。みゆに教えてもらったおかげで俺は補習で受けるテストを一発で満点を取りバイトに向かう。教室を出る際に俺と同じく補習を受けていた慎也から恨みがましい目で見られた気もするがきっと気のせいだろ。ちなみに慎也は後日聞いた話だと補習のテストで満点を取るのに三回ほど再テストをしたそうだ。


 バイト先であるコンビニに到着したのは本来の勤務開始時間を三十分ほど過ぎた後であった。


「黒嶋くん! 早く来て!」


 俺がコンビニに入るなり秋風にそう声を掛けられる。秋風はレジにいるのだがそこには学校帰りと思われる女子高生が並んでいた。どうやら、今日発売の新作スイーツを求めて来ているみたいだ。新作スイーツというのはカップに入ったショートケーキのようなもので透明なカップに入っているショートケーキということで今風に言うなら映える商品となっていた。


 悠長に構えていてもあれなので、俺は急いでバイトの準備をしてタイムカードを切って秋風とは別のレジに入り女子高生の列を捌いていく。


「はぁ.......やっと終わったぁ.......」


「おつかれ」


「おつかれじゃないよ! どうして今日に限って遅れてくるの!?」


「.......すまん」


 どうやら秋風は俺が来るまでの間、店には秋風一人だけであったようで俺が来るまでの三十分は地獄であっと嘆いていた。俺の働いているコンビニでは各時間二人が基本なので一人が遅刻するとこういったことになってしまうのだ。もちろん、休みとかの場合だと代理で店長が働いてくれたりもするのだが遅刻の場合はよっぽどでない限り遅刻してくる人が来るまでは一人なのだ。


「それで?」


「ん?」


「なんで遅刻してきたの?」


「.......補習」


「補習?」


「数学のテストが赤点だったから」


「黒嶋くんって馬鹿だったの?」


「.......返す言葉もございません」


「まぁ、お馬鹿さんなら仕方ないねぇ」


「くっ.......」


 どうして俺の周りにいる女子達はすぐに俺をバカにしてくるのだろうか? と言っても俺の周りにいる女子なんてみゆと秋風と武宮さんくらいなんだけど。武宮さんには馬鹿にされたのかって? 武宮さんには「加賀くんと同じだね!」なんていう一番心にくる辛辣なお言葉を頂きました。.......絶対に次のテストでは武宮さんよりいい点を取ってやる。


 それから、今日遅刻してきたお詫びということで俺は秋風に今日やたらたと女子高生がお買い求めに来ていたスイーツを奢ってやるついでにみゆにもお礼の意味合いを兼ねたお土産として買って帰ることにする。


「ただいま」


「おかえり。補習のテストはどうだったの?」


「おかげさまで一発合格でした」


「私が教えたから当然だよね?」


「はいはい。みゆさんのおっしゃる通りです。ということで、はい」


「なにこれ?」


「お礼という名のお土産」


 先程買ってきた新作スイーツをみゆに手渡すとみゆはそれを見て目を輝かせていた。どうやら、喜んでくれているみたいだ。コンビニスイーツにしてはそこそこのお値段だったので喜んでもらえてそうなので一安心だ。


「和哉くん。ありがとう」


「おう」


「ふふ。でもあれだね? テストも終わったしもうすぐだね?」


「なにが?」


「え?」


「え?」


「いや、なにがって修学旅行だよ」


「あっ.......」

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