第2話 サプライズ
「ただいま」
「おかえり。今から飯食いに行くぞ」
「.......いきなりだね和哉くん」
「嫌か?」
「.......そうは言ってない」
これはツンデレというやつなのだろうか? 何かグッと来るものがあったんだが.......みゆってクール系なのか小悪魔系なのかツンデレなのか一体何なんだろうか?
「それで、どこに行くの?」
「ん? あぁ、店はもう決めてるから着いてからのお楽しみということで」
「.......分かった」
みゆは微妙に納得していないようにも見えるが、ここはサプライズということで許してもらおう。
それから俺とみゆは家を出て俺が予約していた店へと向かう。本当に当日予約で取れて良かったよ.......。
「ここだ」
「.......見るからに高そうなんだけど」
「ところがどっこい。手が出せないほど高くもないんだよなそれが」
俺が選んだ店は電車に乗って2駅先にある小洒落たイタリアン系のお店だ。店自体はそんなに広くは無いが、店自体は北欧風とでも言うのだろうか? 店内は少し薄暗いっといった印象を受けるが、その薄暗さがオシャレ感を出しているというか.......ダメだ.......俺の語彙力が無さすぎる.......。とにかく、照明がオレンジっぽくて、テーブルとかも木で統一されていて薄暗くてオシャレなお店なのだ。
「いらっしゃいませ。ご予約はされておりますか?」
「はい。黒嶋です」
「黒嶋様ですね。少々お待ちください.......はい。19時からのAコースを2名様のご予約でよろしかったですか?」
「はい」
「ありがとうございます。それでは、席までご案内致します」
それから店員さんに案内された席まで向かい俺とみゆが席に着くと店員さんはお冷をお持ちしますと言って、この場を後にする。
「ねぇ、和哉くん」
「なんだ?」
「いつから予約とかしてたの?」
「今日だが?」
「.......本当にいきなりどうしたの?」
うーん.......ここは正直に恋人っぽいことをしたかったって答えるべきなんだろうけど.......俺だけ意識しすぎてるとか思われても嫌だしな.......かと言って、ここで気分だとか言って誤魔化すのも違う気がするし.......。
「.......したかった」
「え?」
「せっかく付き合い始めたんだから恋人みたいなことをしてみたかったんだよ!」
「!?」
あぁ、ダメだ.......恥ずかしすぎる.......。はぁ.......どんな顔してみゆを見ればとか思いつつも前を見てみるとみゆが俯いてしまっていた。
「みゆ?」
「.......ちょっと待って.......今はダメ.......」
ダメって一体何がダメなんだろうか? もしかして、こういったお店は嫌いだったのか.......? けど前にサイ〇リヤに行った時はこういった雰囲気のお店が好きだって.......あれ?
「なぁ、みゆ。なんかお前、赤くね?」
「!?」
よくよく見てみるとみゆは俯いていて顔は見えないが、髪から覗く耳が真っ赤なのだ。そんなことを思っているとみゆは顔を上げたのだが、見事に真っ赤っかであった。涙目にもなってるし.......もしかして、怒ってる? え? なんで?
「今はダメって言ったじゃん」
「す、すまん。けど、どうしたんだ?」
「.......わかんない」
「分かんないって.......」
「もう、嬉しいのか恥ずかしいのか照れくさいのか何だか分かんないの!」
「お、おぉ.......」
良かった.......別に怒っていた訳では無いようだ.......。むしろ喜んでくれているのか? というか、そんな反応をされてしまうとこっちまで照れるからやめて欲しいんだけど.......。
「お客様。お冷をお持ちしたのですがよろしいでしょうか?」
「「!?」」
それでは、失礼しますと言って店員さんは戻って行った。.......一体いつから見られていたのだろうか.......やめよう。これは考えてはいけない類のものだ。それから俺とみゆはお互いに気まずい時間を過ごしていると、コース料理が運ばれてきた。
「お待たせしました。こちらはひよこ豆のトマトスープとなります」
「ありがとうございます」
ひよこ豆って何なのだろうか? 見た目は大豆とかが近いだろうか? とりあえず食べてみるも豆だった。うん、俺には食レポは無理みたいだ。
「このトマトスープの少しの酸味にこのひよこ豆の甘さが引き立てられて美味しいね」
「そ、そうだな.......」
すげぇな、みゆのやつ.......俺にはトマトと豆の味しか分からないのに.......。けど、美味しいということは分かるので極論だがそれだけ分かっていれば問題ないだろ。
それから、パスタにピッツァが出て来て最後にデザートのジェラートが出てきたらコース料理は終了だった。うん。どれも美味しかったんだけど俺にはそれだけしか分からなかった。みゆは感想を言ってくれるんだが、途中から何を言っているのか俺には分からなかったけど、みゆが楽しそうに話すもんだから俺もそれだけで自然と笑顔になれていた。
「和哉くん今日はありがとうね」
「あぁ」
「まさか、バイトから帰るとこんなサプライズがあるなんてびっくりだよ」
「そう言ってもらえると俺としても嬉しいよ」
「まさか、あの和哉くんから恋人らしい事をしたいと思ったなんて言ってくれるなんてね」
「.......悪いかよ」
さっきはそれで顔を真っ赤にしていたくせにとは、思いはしても口には出せない。言ったらせっかく機嫌のいいみゆの機嫌を損ねかねないのだから.......。さっきからずっとニコニコとしているみゆを見ると本当に喜んで貰えたみたいで俺としても幸せな気分になれているのだから。
「ううん。むしろ私はそれが嬉しいんだから」
「.......そうか」
「だから、本当にありがとね」
それじゃ、帰ろっと言ってみゆは俺の手をとっての今にもスキップをしてしまいそうなほど浮かれながらも家に帰るのだった。
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