第33話 日常 2
よし、今日から春休みだ。つまり、バイトのオンパレードが幕を開けるのだ! ということで、今日は朝イチからバイトのシフトを入れていたんだが.......
「おはよう黒嶋くん。昨日ぶりだね?」
「あぁ.......おはよう」
昨日は逃げるようにして去って行ったので何となく気まずいものがあるんだよな.......秋風はなんで春休み初日なんていう大事な日からバイトを、しかもなんで早朝からいるんだよ.......。お前も俺と同じで春休みはバイトに捧げるつもりなのか?
「それにしても黒嶋くんの彼女の白夢さんだっけ? すごく可愛いね!」
「.......だろ?」
「どっちから告白したの?」
「一応俺? みたいな?」
「.......なんでそんなに曖昧なの」
実際には告白なんてしていないし、付き合ってすらいないのだ。そりゃ、曖昧な返事にもなるってもんだ。
「別にそんなことはなんだっていいだろ。ほら、さっさと働くぞ」
「.......黒嶋くん達って本当に付き合ってるんだよね?」
「あたりまえだろ」
今度はちゃんとすぐに答えられたぞ。人はやはり、失敗から学ぶことができるのだ。
「なんで棒読みになってるの.......?」
2度あることは3度ある。人は同じことを繰り返す生き物なのだ。昨日も棒読みに関してみゆにはジト目を向けられ秋風にも突っ込まれた気がするけど、これは仕方の無いことだ。うん、そうに違いない。人は何かをそう簡単に学ぶことは出来ないのだ。
「まぁ、いっか.......彼女さんの方から昨日も腕を組まれてたしね。最後にこれだけ聞いときたいんだけど、黒嶋くんちゃんと私の名前覚えてるよね?」
「.......もちろんだぞ」
「変な間があったんだけど.......それなら答えられるよね?」
「.......みこ?」
「澪だよ! み・お! なんで、たった2文字でさえ覚えられないの! それに、みこって私は神社にでも住んでるの!?」
うん。やっぱり、人は何かをそう簡単に学ぶことは出来ないのだ。たった2文字ですら覚えることが出来なかったのだから.......。けど、さすがにこれは申し訳ない気がする.......ちゃんと覚えといてあげよう.......。
それから、若干不機嫌な秋風と共にバイトに勤しみバイトの終わりにコンビニスイーツを1つ奢ることで何とか機嫌を治してもらえた。
「これが私だったから、これくらいで許してもらえたんだからね! 絶対に他の人にはこんなことしちゃダメだからね!」
「.......はい」
けどまぁ、問題ないだろ。俺が日常生活において話をするのはみゆと慎也と秋風くらいなのだから。あとは、店長やパートの主婦さん達なので名前を呼ぶ機会なんてないだろうし、聞かれることもないだろう。
「ただいま」
秋風と店の前で少し話したあと、帰宅するもみゆはバイトに行っているようで返事は誰からも返ってこなかった。部屋に入りテーブルの上を見るとそこには、生姜焼きとサラダがラップをされた状態で置かれていた。生姜焼きの入ったお皿の少し下には ゛和哉くん お仕事お疲れ様゛ と書かれた置き手紙も置いていた。
「これは、本当にありがたいよな」
みゆが家に来てからは自分で料理をすることも格段に増え、俺が作らなくてもみゆが作ってくれるのでコンビニ弁当やカップ麺はかれこれ4ヶ月は食べていないことになる。
「今日の夕飯は俺が作るとしますかぁ」
俺はそう決めると、今夜の晩御飯のおかずを考えながらもみゆの作ってくれていた生姜焼きを頬張るのだった。うん、大変美味しゅうございました。
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