第21話 新学期早々

 今日は1月6日。俺が退院してから3日が経過して4日目。この3日間は色々あった.......。過労で入院していたことを祖父母に電話で伝えると本気で心配されてしまい、家に戻ってこいとも言われたが今はみゆがいるので何とかそれを拒否した。入院代も出してくれるとの事なのでそれはありがたいが、1度家に戻ってこいとの事なので春休みに1度家に戻る約束をした。

 他にもみゆがバイトを始めた。一緒に暮らすのだから、俺だけお金を払い続けるのはおかしいと言って聞かなかったのだ。それに、


「和哉くんが無理をしてまた倒れても嫌だから.......」


と言われてしまったら俺には何も言い返すことは出来なかった。それにしても、みゆのやつ面接を受けに行った当日にバイト先が決まって次の日からはもう働いているって普通に凄すぎやしないか? ちなみにみゆのバイト先は本屋さんだ。


 あとは、年が明けていた事に気づいて急遽おせちを作ってみたりもした。いや、まじで毎日が色々ありすぎて年が明けていた事に気づいてなかったんです.......。というか、俺が大晦日に倒れたのでそれどころじゃ無かったんです.......。俺の年越しは病院のベッドの上でした。


 そんなことはどうでもいいのだ。今大事なのは今日からまた学校が始まるのだ。


「みゆ。もう何度目か分からないけど、絶対に俺と暮らしていること言うなよ?」


「はぁ.......分かってる。もう5回目くらいだよ? それに、クラスに一緒に話すような子なんかいないんだよ私?」


「.......ごめんなさい」


 そうでした.......みゆさんってぼっちなんでした.......。そういった意味では俺の方が気をつけないといけないみたいだ。


「それじゃ、学校行こ?」


「うん、ちょっと待って。なんで一緒に行くみたいになってるの?」


「同じ家に住んでるんだから、普通じゃないの?」


「ちゃんと俺の話聞いてた? それがバレないようにしないといけないのになんで一緒に行くの? それに、俺とみゆが急に仲良くなってるって変な噂が流れるかもしれないぞ?」


 みゆって賢いようでたまにどこか抜けてるんだよな.......幸い? にして、みゆがクラスで話すような友達はいないみたいだけど何かの拍子にポロッと言ってしまいそうで不安だ.......。


「.......私と仲が良いって噂になるの嫌なの?」


「いや、そうじゃなくて.......付き合ってもないのに付き合ってるみたいな噂が流れるの嫌じゃないか?」


「私は別に構わないけど?」


「!?」


 別に俺と付き合っているという噂が流れてもいいって言うのか? それって.......いや、それはないな。多分、どうせ友達とかいないから困らないということだろう。危ない危ない、完全に自惚れてしまうところであった。


「.......さすがにそれはまずいだろ? 俺はあとから行くから先に学校に行ってくれ」


 そう言うとみゆはジト目でこっちを見てきたあと、諦めたかのようにため息を吐いてから


「.......和哉くんの馬鹿」


そう言って家から出ていった。何が馬鹿なんだろうか? 多分、世間一般的には俺は正しいことをしてるはずなんだが.......いや、クラスの女の子と2人暮らしをしている時点で正しいことでは無いな.......。


 それから、10分ほどおいてから俺も家から出て学校に到着する。ちなみに、みゆにはあらかじめ学校までの道を教えていたので俺が教室に入ると自席に座って本を読んでいた。


「よっ和哉! あけおめ!」


「おぉ、あけおめ」


 俺に話しかけきたのは、加賀慎也。中学からの腐れ縁で遊びに行くほどではないが学校ではよく2人でいるような仲だ。まぁ、遊びに誘われても断っているだけなのだが。


「なぁ、和哉」


「なんだ?」


 俺がそう聞くと慎也は周りをキョロキョロ見たあと、小声で俺に


「お前って、白夢さんと付き合ってるっていうか一緒に住んでんの?」


「.......へ?」


 もしかして、既にバレてるの? みゆにあんだけ言っといたにも関わらず、学校が始まる前からバレてたの? なんで?


「見ちゃったんだよ俺。お前のバイト先のコンビニに買い物に行こうとしてたら白夢さんと和哉が手を繋いで帰っていくの」


「.......勘違いじゃないか?」


「さすがにそれは無いな。白夢さんとか可愛いんだからすぐに分かるし横にいるのがお前なら俺からしたら余計に目を引く」


 .......これ言い訳出来ないやつだ。というか、コンビニから帰っているのを見ただけでなんで一緒に暮らしてることまでバレてんだ?


「気になって尾行したら2人で部屋に入っていくしよ.......」


「おい、尾行すんな。警察に訴えるぞ?」


「それから気になってお前の家までちょくちょく見に行ったら当たり前のように白夢さんがお前の家から出入りしてたし.......」


「もう訴えてもいいよな?」


 完全にストーカーじゃねぇか! 俺をストーキングしてるのかみゆをストーキングしてるのか知らないが完全に警察案件じゃねぇか!


「それで.......やっぱり、そうなのか?」


 そこまでされて誤魔化せるわけなんてないよな.......。


「.......あぁ、そうだよ」


「一緒に警察行くか?」


「お前もストーカーの容疑で捕まるぞ?」


「まぁ、和哉のことだからちゃんとした理由があるんだと思うんだけどさ?」


「はぁ.......後でちゃんと説明するから絶対に噂とかで拡散するなよ?」


「それは、理由次第だな。まっ、もうすぐホームルームも始まるし放課後教えてくれよな」


 その言い分だと、ちゃんと誰にも言わず秘密にしてくれていたのだろう。バレたのが慎也で本当に良かった.......他のやつにバレてたらマジでやばかったかもしれない.......。まぁ、バレたからには理由を説明をしないといけないんだがどこまで言っていいのだろうか? そう思ってみゆにLINEでことの詳細とどこまで話していいのかの確認のLINEを送るとすぐに返事が来て、説明する時はみゆも参加するとの事だ。


「はぁ.......新学期早々思いやられるな.......」


 そんなことを考えていると、始業式は終わり今日は学校は午前だけなのですぐに放課後となった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る