十一巻

第111話

 我が一族はかの有名人の安倍の一族とは、それはかなりの遠縁だ。

 我が一族で唯一名を馳せた正二位と呼ばれる祖先が、かの有名人の縁の者であったらしいが、の処が判然としない様な、そんな曖昧なであったらしいとしか言えない様なだ。

 だが奇才の安倍家有名人程ではないが、不思議なもの達との繋がりを、幼い頃から持てる事で、かろうじて安倍の一族に属している様な一族で、かつて正二位迄出世したが存在するから、一括りに安倍一族の端っこに居られる一族だ。だから正二位迄上り詰めた祖先から、然程時を経ずにどんどんと官位が下がっていっても、陰陽寮おんようりょう陰陽頭おんようのかみにはなれた一族なのだ。


 もともと陰陽師は、占筮せんぜい相地を掌る役人だった。そこに陰陽五行思想を基盤とする他国の陰陽道が、我が国の陰陽道に導入された。

 当初我が国特有の神々の神祇祭を掌る神祇官が、御体ぎょたいの御卜みうら等の、天子の病気治療に応用していたが、自然と必然的に陰陽寮が呪術と共に導入し、我が国特有の超常現象に合った物を作り上げた。

 そして超越した能力者であった有名人によって、それ等が絶対的な物であると証明され、宮中の中での確固たる地位を築き上げ、現在いまの陰陽寮が存在する。


 正二位の功績などは大して公には遺されていないが、かのお妃様にその才を見出され、それは重宝に使って頂いた様だが、それよりも大神の御寵愛はなはだしく神となられた、お妃様の御子様で御親王様の御信頼が半端なく、それ故に青龍を抱きし摂政によって、権力の在り処が危ぶまれた当時の今上帝によって、御誕生されし青龍を抱けし親王様に、その青龍の宿替えをさせ、権力の在り処を正す大業が行われたが、に尽力したが為に正二位迄上り詰めた。

 朱明はもはや正二位から比べれば、凋落したとしか思えない我が一族ゆえに、そんな過去の栄光にすがるのは恥の様に思って生きて来た。

 もしも父が存命であったならば、違う指針を示してくれていたかもしれないが、残念ながら父は朱明がまだ幼い頃に亡くなってしまっていた。

 それでも父は正二位の末裔まつえいにしては、であった為、有名陰陽師一族がほぼ独占していた、陰陽寮の陰陽頭おんようのかみの座を得ていた、我が一族では久方ぶりの貴族の端くれであった。

 

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