第170話
最高神そして太陽神と異名をお持ちになられる、今上帝のそれは尊き御祖先であられる、天の大神に敬意を払い、陽が高くなり始めた頃合いを見計らって、天を仰いで祝詞を唱える。
それは天の大神に敬意を払うものの、その先の瑞獣お妃様と大神に対しての祝詞だ。
御帰還をお祈りする皇后様は、ほんの一部の者しか知り得ないが、瑞獣お妃様の御子様だ。そして瑞獣お妃様とお長兄様は、この国にしか存在しない大神のご寵愛を得るもの達だ。その大事なる皇后様を害し、行き方が解らないものとしたは、恥ずべきかな宮中の欲深さだ……そして今上帝と法皇との確執だ。だから朱明は、瑞獣お妃様と大神様にお詫びを申し上げる。
現世の乱れをお厭いになられるお妃様に……。ご寵愛の瑞獣を害した事となる大神に……。朱明は生まれて初めて心から、姿の見えぬ尊きお方に向かって、お言葉を挙げさせて頂く。
この日の為に、大池に張り出す様に祭祀場を設けさせ、うやうやしくその先端に、大国の呪法を道教に取り入れられた道術で、星座を
すると池を隔てて正殿の奥に、微かに今上帝の気配を朱明は感じ取って睨め付けた。
……確かにあそこに今上帝……青龍が居る……
ひしひしと青龍を、感ぜられて睨め付けた。
恐怖でも脅威でもなくただ偉大なる大きな力が、その尊き力を感じとれて睨め付けた。
今上帝の御憤りが、手に取る様に解る。
その御憤りは、国の主なる権力者を呑み込んでも治らない程の御怒りだ。
その御側にただ存在しないだけで、ただそれだけで、今上帝の御心は凍りついて、私欲の為だけに最愛なるお方を奪った、今生の人間全てに御怒りを御抱きになられておられる。
その奥に、それは大きく空恐ろしい青龍が微かに伺える。
高々の朱明には、その尊く恐ろしい姿を見る事は叶わない。
神々しく輝く金色の光がただ眩しく、目を射る程に眩しく見えるだけだ。
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