第165話
「それでは……主上が御気付きになられるだろう?」
「ゆえに禁庭で……あそこならば金鱗様方のお力をお借り頂ければ、
伊織は再び眉を
何たる恐ろしい奴らだろう……と思う反面、頼りとする自分が存在するのも事実だ。己が真実として認め様としない金鱗に、今上帝と瑞獣鸞の皇后との、愛の結晶ともいうべき御子様を救ってもらった。決して失敗ってはならない、大ミスを回避できたはあの金鱗のお陰だ。
「貝耀様は皇家に誕生致す、その不思議な力をお持ちのお方ゆえ、まだまだ
「禁庭はかつて、雨乞いも神仏の祈りも致した事がある。瑞獣のお妃様が降臨されてからの我が国には、無縁のものとなっておるが、旱魃も飢饉も疫病も流行ったからな……」
伊織は神妙に考える素ぶりを見せるが、朱明が羨む程に整った顔が眼前にある。
「……皇后様の御帰還の祈願を、致すと云うのはどうだ?それならば、
その言葉に違和感を感じて、朱明が伊織を覗き見る。
「
「主上は全てにおいて、御疑いを抱かれる……それは私に対してか、皆に対してかは解らぬが……確かに以前の主上とは違うのだ……」
伊織は、伏せ目がちになって言った。
「……だが、今はどうにか抑えて頂いておるが、そう長くは持たぬだろう……主上が見据えている先が私には解らぬ。ただ……」
「……ただ?」
「動かれ始められたなら、もはや御止めできぬであろう事だけは解る……それは皇后様を失くされた御憤りや、御哀しみとはまるで別物だと……そう思えてならぬのだ……」
伊織は、御簾から離れて朱明を見て
「疾く進めてくれ……」
と重々しい言った。
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