第127話

「よいか?これは我が大神様の威信に関わる計画である故、お妃様そしてその御子様である神楽の君様にとっても、決して失敗しくじりを許されぬ策略である。故にいにしえの折よりその抜け目のない能力を、お妃様に買われた者の子孫をお使いになられる……それが私がそなたを、護りと致した一族のだ。故にお妃様がお動きとなられたならば、そなたはその者に力を貸し、必ずやお妃様のご希望に沿う様に致すのだ……」


「……それが為に私は、散り切れませなんだのでございますか?」


「……いや違う。そなたは確かに霧散した。三尾の私の一部の孤銀は跡形も無く散った。だが事を成す為に、そなたを五尾とし私の一部として誕生させたのだ。ただそなたの意思と記憶を残させたは、如何様にしても事を成さねばならぬ故、大神様にをして頂いた。天が誕生させる大神様は、全ての記憶を残して代を替えられる。それは天が必要に応じて、大神様を誕生させるからだ。大神様はその誕生に、必ずや天意を持って誕生されるから、御記憶を全て残されねばならない。そしてその膨大なる御記憶に基づいて、天意を遂行される。故に霧散したものの記憶を残せる術をお知りになられるは、大神様のみと言うても過言ではない……」


「……つまり私は三尾の意思と記憶を遺して、再び貴方様の一部として、五尾となったのでございますか?」


「さよう……故にそなたは私の一部である孤銀ではあるが、三尾の孤銀にあらず。五尾の孤銀であるのだ……」


 孤銀は神使でも神でもないから、神の域の事は理解できない。

 ただ孤銀は孤銀で主人の一部だが、前の三尾の孤銀ではない、五尾の孤銀という事らしい事だけを知った。だが孤銀はそれだけで充分だ。

 なぜなら孤銀は眷属神の主人の一部であり、その主人が絶対であるからだ。

 主人が三尾と五尾が異なると言えば、孤銀はそれを信じるのみである。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る