第60話
命だけは守って頂ける……というが、大した傷を与えられるでもなく、大事な烏帽子をクチャクチャにされるくらいだったのだ。つまり大鬼は手加減をしてくれていたという事だろう。
確かに嘲りを持ってかなり馬鹿にしていたが、それは朱明の力量を考えれば致し方無い事だ。
大怪我をしなかった、五体満足であるだけ目っけ物という事だ。
だからちょっと、あの大鬼の願い事というヤツを、聞いてみたいと思ったのかもしれない。
牛車が止まった。
「着いたか?」
とか言うものの、なかなか車から出る気が起きない、小心者の朱明である。
「朱明様、着きましてございます」
子鬼が促すから、朱明は了解した手前、仕方なく牛車を降り様とすると、孤銀が先に降りて
「あれ?
と言った瞬間に、牛の背に気絶した牛飼童を認めた。
「私を見て驚かれまして……」
水干姿の、角を持つ
「あー?……だろうねー」
朱明は世間の噂って、案外的を得ていると納得してしまった。
おどろおどろしいもの達と関わりのある家系……と世間一般に思われている我が家系だが、決して嘘では無いわけである。
「おお!朱明やはり来てくれたか?」
低くてとても怪しげな声が、物凄ーく親しみを帯びて、それは嬉しそうに聞こえた。
「お、大鬼……丸……」
朱明が、全身を強張らせて言った。
「いやいや朱明よ。そなたを食わなんでよかった。真によかった……」
大鬼丸は親しみを込めて言っていると思うが、かなりグロい事を言っている。
朱明は微かに引き気味となった。
「……私に願いたい事がおありだとか……如何なる事にございます?」
「そなたに、青龍を止めてもらいたいのだ」
「はっ?」
「……はっ?ではない。青龍だ青龍……今上帝が抱きし、それは馬鹿デカイ青龍だ」
大鬼丸はそれは真剣な表情を向けて、唖然とする朱明を見つめて言った。
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