相談内容If もっと仲良くなるためには Crossing summer illusion

プロローグ イチャイチャ系高校生ラジオ番組『ゆずちゃんねる』

「ラジオネーム『超絶可愛い学校のアイドル』さんから頂きました」


「ラジオネームが自身満々だ!?」


柚夏ゆずか、ラジオネームにツッコむのはどうかと思うんだ」


「だって、柚希ゆずきは気にならない? このラジオネームの子」


「そりゃ気にならないって言われたら、嘘になるけど」


「……柚希は気になるんだ。私以外の女の子のことが。ふーん」


「柚夏が言ったんじゃないか……開始早々から不穏な空気が流れているけど、お便りを読むよ」


『はじめまして。超絶可愛い学校のアイドルこと……危ない本名を書いちゃうところでした。お二人のラジオを聴いていると、とっても仲が良さそうな感じに、思わず笑顔になっちゃいます。いいなーって思うんです。


 そこで相談なのですが、私には気になっている先輩と、とてもひどい先輩がいるんです。ひどい先輩にも、そりゃあ少しは感謝もしているんですけど……。


 それはともかく、気になっている先輩もひどいんですよ。私がデートに誘っても苦笑いで返してくるし、あーんってしてくださいって可愛くお願いしても、ノッてくれないんです。


 私が学校で一番可愛いってことは間違いないんですが、それでもやっぱり不安になっちゃうんです。先輩は私のこと、どうでもいいのかなあって。


 みんなが可愛い可愛いって褒めてくれるんですけど、特定の誰かと仲良くなるっていうことがわからないんです。初めてなんです、こんな気持ち。


 とても親密なお二人だからこそ、お聞きしたいです。


 気になっている先輩と、もっと仲良くなるためには、どうしたらいいですか?


 ついでに、ひどい先輩ともちょっとは仲良くなってあげてもいいかなって思います。


 お二人の意見を、教えてくれたら嬉しいです』


「これ、どうすればいいんだろうな」


「でもなんだか、この子の気持ちがわかるなあ」


「柚夏にはわかるんだ。僕にはなんていうか、二人の先輩のことを好きなのか嫌いなのか両方とも取れるというか」


「……柚希のどんかん」


「何か言った?」


「なんでもなーい。きっと『超絶可愛い学校のアイドル』さんも不安なんだと思う。それに、おそらくは二人とも、彼女にとって特別なんだよ。だから悩んでるように感じるね」


「なるほどな」


「それで、柚希としてはどうなの? 女の子からアプローチをされても、そっけなくしちゃう男の子の気持ちは?」


「あー、それならわかるかも。ちょっと言い辛いけど、その先輩はきっと、真面目で一途なんだと思う」


「言っちゃうんだ」


「でも、正直まだわからないかな。『超絶可愛い学校のアイドル』さんが可愛くて、照れてるのかもしれないし」


「そうかもね。ヘタレ同士はわかり合えるのかも」


「……それでは次のお便りを」


「スルーしたっ!?」


「冗談だよ。まだ答えてないし。えっと、仲良くなることって難しいと思うから、いきなりじゃなくて、少しずつ二人の時間を積み重ねていけばいいのかもしれないです」


「柚希らしいね。二人でいることが楽しいって思えば、先輩も楽しいと思うんだ。楽しいことをいっぱいしよう!」


「なんだかいい感じにまとまったな。それでは次のお便りは、ラジオネーム『愛を知らないドラゴン』さんから頂きました」


「こんなに苦しいなら愛などいらないのかな?」


「柚夏の言ったことが、何かのネタだってことだけならわかる。えーっと」


『初めまして。いつも楽しく聞いています。最近はお二人のいちゃいちゃっぷりが羨ましくて仕方がないです。


 突然ですが、私には好きな人がいます。


 ですが、決死の思いで「愛してる」って告白をしたのに、見事に意図を理解してくれませんでした。


 その人は普段から「愛こそが全てなんだよ」とか言っていて、私の愛には気づいてくれないようです。


 それでも、急に抱きしめて来たり、遊びに誘って来たり、「愛をいっぱいあげる」ってことあるごとに絡んできます。


 お前もう、わざとやってんじゃねえのかク〇が! って思います。


 もう私には、愛とはなんなのか、わからなくなってきました。


 お前らもう爆発しろよと言いたくなってくるくらいに愛し合っているお二人に質問です。


 愛とは――なんですか?』


「……答えづらい」


「……だね」


「それに、愛し合っているなんて、ねえ」


「……ぼーっ」


「柚夏?」


「な、なんでもなーい。えーっと、愛ってやっぱり、相手のことを思いやる気持ちだと思う」


「そうだね。愛とは何かって言えないかもしれないけど、とても大切なものだって思う」


「それにしても、その人から嫌われてるわけじゃなさそうだね」


「なんていうか、愛の示し方が特殊すぎる感じだな」


「愛してるかあ……言われたいなあ」


「……もうちょっと待ってくれないかな」


「えっ?」


「そ、それじゃあ次のお便り……というか緊急でメールか。えーっと『ドラちん悩みすぎ。マジウケる―』ってなんだこれ!?」


「もしかして『愛を知らないドラゴン』さんの知り合いから?」


「会話が繋がった!? というか、ラジオで会話するなよ!」


「じゃあ次は私が読むね。ラジオネーム『愛だよ!』さんからお便りを頂きました」


「ん?」


『愛してまして! お二人のラジオを聴いていると、とっても愛が伝わってきて、幸せな気持ちになります。


 ゆずちゃんねるが続いていくことで、もっともーっと愛が広がっていけばいいなあと思います。


 でも、大丈夫ですか? 愛、きらしていませんか?


 もしも愛が足りない時があれば、私が精いっぱいの愛を注ぎます。私の愛は、プライスレスです。


 これからも、二人には色々なことがこれからもあると思うけど、愛があれば大丈夫です。


 大切なことは――愛だよ!』


「はじめましてを告白風に言われるのは初めてだよ」


「というか柚希……この人ってもしかして……」


「あっ! もしかしてさっきの『愛を知らないドラゴン』さんの好きな人って……」


「すごい偶然だね」


「いやもうこれは偶然じゃないだろ。テロだよ! ライングループでやれよ!」


「柚希のキャラが崩壊したね」


「崩壊もしたくなるよ……気を取り直して次のお便りを読もうか。ラジオネーム『コネコネ子猫』さんから頂きました」


「可愛いラジオネームだね」


『……彼氏に似合う首輪は、どんなものがいいと思いますか?』


「内容は可愛くなかった!」


「柚希に……首輪かあ」


「待って。そんなことに興味を持たないで。柚夏なんだか目が怖い」


「柚希ってけっこうモテるんだよね。誰かに盗られちゃうくらいならいっそ……」


「なんで目から光が消えるの? えー普段の僕たちはこんなにカオスじゃありません。信じてください」


「残念だけどそろそろ終了のお時間となりました。また来週」

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