超短編恋愛小説 純ーjunー

スパァン!スパァン!


ケツを叩く音がする。


もう何年も聞いていないその音は、俺を思い出せと言うように規則正しく、力強く響いてくる。


スパァン!スパ?・・・アン・・・!


まだ迷いがあるのか、そう問いかけてくる。


スパァン・・・!立ち上がれ・・・!


立ち上がれ、そう言ったように聞こえる。


俺の名は純。高校2年生の16歳、年齢不詳の男だ。


毎日が退屈な日々、くらだないクラスメート。くらだないじゃなかった、くだらないクラスメート。


こんな平凡な毎日を過ごしてて、こんな感じで爺さんになっていくのかなって、そう思ってる。


思ってたら、おんとし87歳。あっという間に71年過ぎちまった。


この71年お前は何かやってたのかって?

やってねーならまだ諦めがつくが、中途半端にあれこれやってたもんだからなおさらしょーもねー。


結局つまんねーつまんねー思ってたらどんどん歳をとっていき、初恋のあの子は10年前に死んで灰になったし、こっちは嫁もいなけりゃ孫もいねー。


意地を張る相手も、恨む相手も、認めてもらいたい相手も、もういねー。

もう今さら何も思うことなんてねー。


これがホントの滅却心頭火自涼てか!好!やかましいわ!


スパァン・・・!


これは、間違いない。あの時のケツを叩く音・・・?


ス、スパァン・・・。


頷きやがって、やっぱりそうか。


スパァン///


照れんな。ケツを叩く音が、今さら俺に何の用だってんだ?


ワタシ アナタ スクウ


俺を救うだって?バカ言っちゃいけねえ、俺はもううんざりなんだよ。


退屈な日々、くだらねー毎日。くだらねー、かつていたクラスメート・・・。


スパァン・・・!


ケツを叩く音は、笑った。


その笑顔は、俺がいつ見たかも忘れちまった、本物の笑顔。

大丈夫、やり残したことがあるんだろう?


ケツ音・・・お前・・・。


目が覚めると、俺はベッドの上にいた。


子供のころの部屋・・・高校生のころの身体。


タイムリープ、ってやつか?


ご飯よー。


あの声は、母ちゃん。


今日のご飯は、




サバ




うわあああああああああああ



叫んでも叫んでも、俺の声はサバの闇に飲み込まれていく。


まだ食べたくない、食べたくない食べたく


跳ねるサバが目の前で跳ねる動くはね


あのケツは天使なんかじゃない、あいつは––





マゴチ





地獄十二階、その第三層––海鮮地獄。


新鮮な海の幸に堕とされれば、もう


スパァン・・・!

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