第7話 FAXのある生活
それからしばらくして、遠距離で付き合っていた彼女から
深夜FAXが届いた。
「きみのお財布が家に届いたよ」とまるっこい文字で書かれていた。
「ひょえ?」
彼女には一度フラれている。
暇があれば、彼女のクラスに放課後忍び込み、彼女の机にたくさん思いを書いていた。
そんな変な奴は気持ち悪がられて当たり前だ。
ただ、人生は不思議なもので、女性は気持ちが悪いものに興味を持つ時期がある。
その時期にタイミングよくぶつかり、付き合うことになった。
ジャニーズの連中が幅を利かせる時代、ナミーズ男子、ブサーズ男子はメダカのように存在を意識されないまま人生を過ごす。
水草や藻の中に隠れ、人魚姫と出会う日を待っている。
一人は気楽でいいじゃんと若いうちは言えるけど、その後はどうなのか。
ワタシは偶然拾われたが、拾われなかった人生を考えるときがある。
きっと一人で水草に隠れていたはずだ。
就職氷河期世代は、引きこもりや独身者、派遣切りのキーワードを背負っている。
団塊ジュニアとして、団塊世代に次ぐ人口の多さは消費者としての強みはあるが、いわゆる普通の暮らしができない人間は数多くいる。
では、普通とはなんだ!
大学を卒業する頃は、フリーターが流行っていた。
非正規職員として派遣職員としてでも充分暮らせた。
就職をする人間をどこか馬鹿にする風潮さえもあった。
フリーターで肩で風を切っていた人たちは、バブル崩壊により肩をすぼめることになろうとはそのときは考えもしなかっただろう。
ワタシの世代はそんな時代の狭間に置かれ、生き方や考え方が真っ二つに分かれていた。
ただ、生き方の正解はあるようで無い。
一生ホームレスであろうが、世界の大富豪であろうが、500年後の人間からすれば過去の古い人間。自分の先祖か何して生きていようと気にもならない。
何も残らないし、残す必要も無い。
人間は絶対的に生きているようで、頭の中は相対的なのである。
常に身近な人間と自分を比べているのだ。
そんなことをしても不毛であることは、よくわかっている。
それが人間の性であり、どんなに哲学や思想が蔓延っても、そこの部分が変わってきたら、人間ではなくなる。
分かっていても止められない。
人間が人間であるが所以なので放っておくしかない。
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