霊の謳

作者 白黒飴

死しても尚、戦う者たちが紡ぐは霊の謳。

  • ★★ Very Good!!

 死んでも尚、戦うことを余儀なくされた主人公は、流されるがままに激烈な戦いに身を投じていく。
 恐らくこの作品を一言で説明してくれと言われたら、大抵の人はこんなニュアンスのことを言うと思う。
 現実世界ではなく、霊界と呼ばれる現世とは表裏一体の世界で繰り広げられる戦いは全てにおいて霊が重要なキーとなっている。物語の序盤で主人公が戦うのは、みんながよく知る学校の七不思議。
 もちろんインターネット小説を読みなれている人であるならば、冒頭の説明で粗方の主人公の目標や敵が見定められることだろう。そこでオリジナリティ溢れる敵役を出すのではなく、恐らく日本人であれば誰もが一度は触れたことのある七不思議を相手にすることで、この作品の一番の魅力である戦闘に注目しやすくなっている点は非常に読者のことを考えた構成だと感じる。
 また良いか悪いか、イメージしやすいインターネットバトル小説とは違い、霊の謳における主人公は言葉通り無様な戦闘を繰り広げる。昨今多くの小説が強大な力を手にして、スタイリッシュに戦いに勝利するというパターンが増えてきているなか、昔楽しんでいた漫画の主人公は、血と汗に塗れて、傷だらけの体で勝利を勝ち取っていた。その古き良きとも言えよう無様さが、今に忘れられた絶妙なカタルシスを読後に齎せてくれる。
 しかし作者の性格は良いのか悪いのか、主人公を全く休ませることなく、ボロボロなまま新たな敵に遭遇させたりする展開は、非常に焦燥感に駆られる思いで読み進めることになる。
 更新待ちではなく、ある程度更新を溜めてから一気に読み進めるタイプの私にとってこの手に汗握る戦闘の連続はまるで長距離マラソンの様なこちらが息切れしてしまうのではというほどの、切迫した緊張感を覚えさせてくれる。
 はいはい、今日も一薙ぎで勝つんでしょ、とはいかない。この状況でどう勝つんだ!? というハラハラ感はテンプレ作品には絶対にない緊張感といっても過言ではない。
 また戦闘の描写力もなかなかなもので、登場人物たちがまるで踊るように目まぐるしく展開を変化させる戦闘シーンは、ストーリーの焦燥感も相まって、読むというよりは読まさせられていると言うほどに引き付けられる。

 だからといって、すべてが最高というわけではないのはもちろんである。個人的な趣味というのも大いに含まれるが、まず戦闘中、キャラクターの気合の様な「ハッ!」といったタイプのセリフがどの話数でも多く散見されるのだが、これが少し冷める。もちろん本当の戦いの中で、べらべらと喋っていたら、敵に切られる前に舌を噛みぬいて負けるだろう。しかしこれはフィクションであるのだから、もう少し味のある会話があってもいいのではないかと思ってしまう。
 
 細かいところを言い始めればキリがないが、大きく気になるところはそんなところであるために、全体を通してみてもよい作品だといえると思う。
 シンプルかつ古き良き手に汗握るバトルもの、もしそんなものを求めている人がいるのであれば、ぜひこの霊の謳おすすめしたい。

 完結時に星三つにさせていただきます。これからの霊の謳に期待を込めて。

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