第24話:少女の宿敵
昨日のあれは夢だったのだろうか。いや、確かに現実だった。
俺が振られた高崎さんが所属する生徒会は、この地をオウムから護るべく組織された協会のメンバーというのが事実だった。
あの格好をしていたのが本当の高崎さん?それにあの八代や、会長もだ。
今日顔を会わして、果たしていつも通りに接することができるだろうか。高崎さんとはいつも緊張して普通に接することはできてないけど。
「はあ、どうすっかな...」
「よ!新、どうした?朝からため息なんてついて?そんなにため息ついてたら幸せが逃げてくぜ?」
「そうだよ!朝一緒に行く時からずっとため息ついてるんだよ?どうかしたのか聞いても教えてくれないし...」
「いや、ほんとになんでもないよ...」
こんなこと言えるわけないしな。碧人にはもちろん、雫でさえも。
「まあ、いいか。でも今日だろ?」
「?何が?」
なんか今日あったけ?ダメだ思い出せない。
「林間学校の班決めだろ?もうすぐだし」
あーそういえばもうすぐだっていってたな。というか班決めるの直前過ぎない?
それに、班決めってどうやってするんだっけ?
「雫は、三波と一緒の班になれるといいね〜?」
「え?雅ちゃん!う、うんそうだね...」
「まあ、雫とは昔から一緒だからな。雫がいてくれると助かるかもな!」
「あ〜。新、さてはお前バカだな?」
「バカね」
なんだよ、二人して。何がバカなんだよ。しかも碧人、お前よりは頭いいぞ。
まあ、全く仲良くないやつとなるよりかは、やっぱり顔なじみとなった方が楽しいよな。
「な、なんだこの班は...」
誰にも聞こえないように小さくボヤく。
「あ、新!よろしく!」
「あ、あの。よろしくね?」
「よろしく頼む」
そう、俺は高崎さんと雫、そして
結局、班決めの方法はくじだった。
そのため、初め高崎さんが同じ班だとわかった時は嬉しさ半分と、戸惑いが半分だった。どう話そうか。向こうは普通かもしれないが、こちらは向こうの事情を知ってしまっているだけになんとなく、一方的に気まずく感じる。
そこにさらに雫が同じ班になったことで、助かった、話しやすい空気になる!と思ったが、なぜか高崎さんと雫は熱く視線を交わして、バチバチと火花を散らしているようにも見えなくはない。
そして、俺とは別の班になった碧人と雅さんがこちらを見ながらニヤニヤニヤニヤとしているのが見えた。
そんな空気の中、椎名がこちらを見ながら言う。
「お前、中々嫌なやつなんだな」
嫌なやつってなんだよ。俺が一体、お前に何したよ。
◆
今日は林間学校の班決めがある。決める方法はくじ引き。
例年であれば仲の良いクラスのメンバーで組むのが通例だが今年はなぜかそう決まった。
それもこれも会長が「たまにはこういう面白いこともしてみよう」と安易に提案したからだ。
そんなことを言い出したのもきっと、生徒会前にいのりちゃんがいじって、私が笑ってしまったのが原因であると思う。つまりいじわるだ。
生徒会では私と八代君が主導で動いているため、他の生徒からの批判もいくつかは上がってきた。主に八代君を好きな女子からの嫉妬のようなものが多かった。
よくある嫉妬の視線には慣れているつもりではあるが、やはりされて気持ちの良いものではない。
それにここ1ヶ月ほど、協会の方で対処しているオウムが他の何者かに倒されていると言う解決できてない悩みもある。
この悩みは支部でも問題視されていて、本部から出向してきている相良さんからも本部へ報告がされている。
そんな悩みを抱えながらもついに班決めの時間になった。
クラスの仲のよい子と一緒になれたらよかったが、何の運命のイタズラか私は、あの三波君と一緒の班になってしまった。
三波君とはあの告白以来、一度だけ話したことがある。
それは私が協会へ向かおうとした途中に通る裏路地でチャラそうなヤンキーに絡まれていた時のことである。
そんな場面を彼は颯爽と助けにきてくれたのだ。
以前にも見た光景だったが、その時は彼は殴られながらも私をかばい、連れ出してくれた。決して彼はケンカが強い方ではないのである。
それにも関わらず、また殴られるかもしれないのに再度私を助けにきてくれた。あんなに冷たい振り方をした私をだ。なんで彼はここまで助けてくれるんだろう。疑問でしかなかった。
またやられるそう思ったが、彼は前回のようにはいかなかった。なんと絡んできた相手を圧倒的な実力差でねじ伏せたのだ。
その時、なぜか私は胸が大きく高鳴るのを感じた。
その後、彼の目を見た時、不思議な感覚に襲われた。まるで広い宇宙のように煌めく何かを感じ、吸い込まれそうになった。
それから彼を見るたび、なぜか鼓動が早くなるのだ。理由はわからない。
初めての経験で誰にも相談できなかった。
そんな彼と私は、林間学校で同じ班となった。
同じ班になったのは彼だけでなく、彼の幼馴染である新堂雫さんも同じ班になった。
彼女はなぜかこちらに対してまるで親の仇でも見るような視線を向けている。
わ、わたし彼女に何かしたかな...。きっと彼女は三波君を振った私を許せないのだ。でもそんな視線を向けられる言われはないと思っている。
私もなぜか彼女に負けたくない気持ちが沸き起こり、彼女と視線を交わした。
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