にゅうめんマン vs 悪の教団幹部(5)

にゅうめんマンと三輪さんが海辺で話をしていると、浜沿いの車道に白いトヨタ車がやって来て道路脇のスペースに止まった。にゅうめんマンは気にも留めなかったが、車の中から現れたスーツ姿の男2人は、砂浜を革靴でのしのし歩いて一直線ににゅうめんマンたちの方へやって来た。何かめんどうくさそうなやつらが来た、とにゅうめんマンは思った。


「こんにちは」

 男の1人がにゅうめんマンに声をかけた。

「あなたがにゅうめんマンさんですか」

「そうですが……」

 にゅうめんマンいぶかしい目を向けた。

「わたくし、こういう者です」

 男はスーツのポケットから名刺入れを取り出し、そこから1枚の名刺をにゅうめんマンに差し出した。それによると揉上市役所総務部の人物らしい。

「お忙しいところ恐縮ですが、うかがいたいことがあって参りました」

「その前に聞きたいんですけど、どうして俺の居場所が分かったんですか」

 にゅうめんマンは、見知らぬ男たちに自分の居場所を特定されたので少し気味が悪かった。

「市民から情報提供がございまして」

「どんな情報ですか」

「にゅうめんマンという方が毎朝この海岸に、ある若い女の方目当て……」

「こらーーー!!」

 にゅうめんマンは突然叫んだ!一同はおどろいた!!

「ちょっとこっちへ」

 にゅうめんマンは、三輪さんへ声の届かないところまで男たちを引っ張って行った。


「あんたたちにはデリカシーってもんがないんですか」

「デリカシーですか」

「そうです。分かるでしょう」

「そんな奇抜な恰好(かっこう)をしている方がまさかデリカシーを問題にするとは思わず、失礼しました」

「けんか売ってんの?」

「滅相(めっそう)もない」

「とにかく、何か話があるというなら、もうちょっと配慮してもらいたいですね」

「はい。気をつけます」


3人は三輪さんのいる所に戻った。三輪さんはどういう態度を取るべきか分からずちょっとどぎまぎした。

「それで話というのは何ですか」

 にゅうめんマンはあらためてたずねた。

「はい。揉上市役所では今緊急の要件で『ひやむぎマン』という方を探しているのですが、名前がにゅうめんマンさんと似ていますし、着ている服がよく似ているという情報もありまして、もしかするとにゅうめんマンさんはひやむぎマンさんのお知り合いではないかと思い、話をうかがいに参りました」

「お役に立てず残念ですが、そんな変な名前の人物は聞いたことがありません」

「承知しました。それならば仕方がありません。あと、名前はどちらかというと『にゅうめんマン』の方が変だと思います」

「けんか売ってんの?」

「滅相もない」

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