木漏れ陽の里

作者 うたかた。

人の世の“生き辛さ”と、森の自然な“優しさ”を、美しく調和させた傑作

  • ★★★ Excellent!!!


 多くの人に読んでいただきたくて、レビューさせていただきます。

 本作品は、うまく社会に適合出来ない青年が、林業に携わることで──一条の光を感じ取る。そんな再生の、物語です。


 この世の中には、“普通の人が、普通に出来ること”を、何故か“普通に、出来ないヒト”、というのが一定数存在します。
 それら人々は──不器用な人、要領の悪い人、グズ、社会不適合者……──様々な言われ方がなされます。


 知らないうちに、社会は、急速に効率性を求め、利益だけを追いかけ、競争を強いる、過酷で凄惨な世界になってしまいました……。


 この作品の主人公は、“普通のことが、普通に出来ない”青年です。
 そんな彼は、当然のように、会社組織から弾かれ──ドロップアウトしてゆきます。

 ですが、人は人の──社会の中でしか、生きていけません。

 とある出来事を切っ掛けに、青年は再び、社会の中に身を投じます。

 社会に適合出来ない人間が、社会の中で、生きていかざるを得ない……その恐怖、その苦悩。
 そんな主人公の感情が、とてもリアルに掬われていて……胸に迫ります。
 読んでいて、思わず膝を打つような、強い共感を何度も感じました。

 そして、この短編には、主人公と同じ“生き辛さ”を抱える、先輩職人が出てきます。
 彼から、ポツリ、ポツリと紡がれる言葉が、青年の胸に滲み入り、彼の灰色の心に、柔かな色が差してゆく……
 その様子が、森の中の、静謐で澄んだ情景と共に、とても鮮やかに描かれていています。


 
 これは、たった四千文字の中に──大切なメッセージが、ギュッと詰まった、とても美しい物語。

 挫折経験のある人、社会の“生き辛さ”に苛まれている人、どうしようもなく“しんどい”人……そんな全ての人に、是非読んで欲しい傑作です。

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