第33話 到着5日目・昼その3
シープさんの遺体が『右翼の塔』で発見され、遺体を『右翼の塔』側階段の間の地下倉庫に運び終えた。
そこで、コンジ先生が、はっと焦った表情をしたのを私は見逃しませんでした。
珍しくコンジ先生が冷静さを欠いた様子でした。
「ちっ! しまった! オレとしたことが!」
コンジ先生が、『オレ』って言ってる! 真のコンジ先生です!
「いったい、どうしたんですか? コンジ先生。」
「ああ。ビジューさんはどこに行った?」
「あ、そう言えば、熱っぽいとかで部屋に戻って解熱剤を飲むとか言ってましたけど、それがなにか?」
「すぐに、ビジューさんの部屋に行くぞ! ジェニー警視! ジョシュア! 警戒してついてきてくれ!」
「あ、はい。わかりました。」
「うむ。キノノウくんは何か考えがあるようだな。」
そして、私たちはさっそく『右翼の塔』側の2階、塔のほうに向かって奥にあるビジューさんの部屋に向かいました。
ここは私の部屋、なくなったアイティさんの部屋、そしてその奥がビジューさんの部屋になっています。
反対側は、エレベータールーム、コンジ先生の部屋、ビジュー産の部屋の向かい側の奥はジェニー警視の部屋です。
ビジューさんの部屋の前で、構える私たち。
ジェニー警視も散弾銃を構え、コンジ先生がハンドガンを構えて、私はその、燭台を構えて三人の目を合わせました。
ああ、コンジ先生。こういう時の顔は最高にカッコいいんだけどな……。
と……、とにかく、せいので合わせて、扉を開けました。
バンッ!!
ビジューさんの部屋の扉が開かれた。
中はシーンとしていて、物音ひとつたっていません。
ビジューさん、熱っぽいと言っていたので、寝ているのでしょうか?
ベッドに毛布がかかっていて、誰かが寝ているようではありました。
「気をつけろ……。」
コンジ先生がそう言いながら、部屋の中に率先して入っていきます。
こういう勇気があるところはさすがだと思います。
ジェニー警視がその後に続きます。
私は最後に続いて入りました。
ベッドの上の毛布をめくった!
……ですが、そこには誰もいませんでした。
周囲に隠れられるようなところ、クローゼットや、物陰など探したものの、やはりビジューさんどころか誰もいないことが確認できたということでした。
「ビジューさんは部屋に戻らなかったのか……?」
「そうでしょうかね……。解熱剤を飲むって言ってたんですけど、どこ見ても薬らしきもの、見当たりませんよね?」
「たしかにな。ジョシュア。君も時にはなかなか鋭いじゃあないか?」
「いや! そりゃ、探偵の助手ですから!」
「キノノウくん。それにしても、ビジューさんの行方もきにかかるが、なぜビジューさんを探す必要があったんだね?」
「ああ。ジェニー警視。それを説明しましょうか。」
「とりあえず、ダイニングルームにみなさんを集めてください。」
「ああ! それって、もしかして、犯人はあなたです! ……みたいなことですか? コンジ先生!」
「ジョシュア……。君は早とちりすぎる……。まあ、謎の一部は解けたというのは間違いないがな。」
その後、私たちは全員、と言っても亡くなられた方及び、行方がわからなくなった方を除いて、という条件付きですが、ダイニングルームに集まりました。
ママハッハさんの部屋に閉じこもっていたママハッハさんとアネノさんも、メッシュさんやコンジ先生、ジェニー警視の説得でやっと出てきてくれました。
アレクサンダー神父は相変わらず、『左翼の塔』の5階で祈祷をされていたのですが、そんな場合じゃあないとジェニー警視が引っ張ってきました。
そして、今、おのおのの席に着いたというわけです。
席順は以前変わりなくですが、以下のような席順となっています。
【ダイニングルーム・長テーブルの位置関係】
② ③ ④ ⑤ ⑥ ⑦ ⑧
①
⑨ ⑩ ⑪ ⑫ ⑬ ⑭ ⑮
※ママハッハさんとアネノさんの席の後ろに椅子を用意して怪我をしたメッシュさんが座っている。
①パパデス・シンデレイラ(死亡)
②ママハッハ・シンデレイラ
③アネノ・シンデレイラ
④ジジョーノ・シンデレイラ(行方不明)
⑤スエノ・シンデレイラ
⑥ジニアス・サッカセンシュア
⑦コンジ・キノノウ
⑧ジョシュア・ジョシバーナ
⑨シュジイ・ドクタ
⑩エラリーン・クイーン(死亡)
⑪イーロウ・オートコ(死亡)
⑫アイティ・キギョーカ(死亡)
⑬ジェニー・ガーター
⑭ビジュー・ツーショウ(行方不明)
⑮アレクサンダー・アンダルシア
「キノノウ様! いったいどういうことかしら? 正直、わたくしたちはできれば部屋にこもっていたいのですけど?」
「そうよ! 母上の言うとおりだわ。ジジョーノもいなくなってしまって……。父上も……。もう、嫌なの!?」
ママハッハさんもアネノさんも少しいらいらしているようです。
コンジ先生が、それを両手でまあまあといったジェスチャーをして、話し出しました。
「まず、さきほどシープさんが遺体で発見されました。場所は『右翼の塔』の中、地下室です。幸いにして、『モナリザの最後の晩餐』の絵画は盗まれていませんでしたが。」
「そうですか! それは安心しました。で、シープはなぜ、そんなところへ行ったのでしょう?」
「そうですね。それは、ここにその秘密が書かれていました。」
そう言って、コンジ先生が手に持って出したのは、何かの本……、いや、日記でしょうか?
「シープさんは執事として、毎日ご自身の業務日誌をつけいらっしゃったのす。シープさんの部屋に残されていました。」
「キノノウくん。私が読み上げよう。」
「ええ。ジェニー警視。お願いします。」
ジェニー警視がシープさんの日誌を読み上げた。
「◯月✗日 報告。
私は今、とても恐ろしい想像をしている。
私はあの日、夜通し徹夜で見張っていたのだ。
誰も決して3階の階段の間を通ることはなかった。
ならば、考えられるのはひとつ……。
そう、『右翼の塔』側のパパデス様の部屋へ続く扉から侵入したのだ。
そして、それはあの御方であれば、可能だった……。
それを確かめに、地下室の扉がどうだったか、調べてみようと思う。
人狼は夜に動く。
朝方近くであれば、比較的安全だろう。
もし、私の考えが当たっていたら、娘が父親を殺したということになる。
長年、仕えてきたが、それはあまりにも悲劇的すぎる。
願わくば、私のこの推理が外れていることを望む……。」
ジェニー警視が読み上げ終えた。
みんな、静かに黙ってそれを聞いていた。
娘……、それは誰を差しているのか?
行方不明のジジョーノさんか?
それとも、アネノさんかスエノさんか?
そういえば、あの日、スエノさんは『右翼の塔』の地下室に閉じ込められていた。
まさか……!?
スエノさんが!?
コンジ先生は黙って、ジェニー警視の話を聞いていたが、その眼はキラリと希望を見つめているようでした。
私はコンジ先生のその頭脳に期待するしかないのでした。
やはり、吹雪の音がゴオゴオと鳴り響き、よりいっそう、私たちが閉じ込められているという現状を強く思い知らせるのでありましたー。
~続く~
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