第16話 到着2日目・夕食の時間


 「あと、確認しておくべき点がある。」


 あれ? 人狼の正体の目星がついたのではなかった?



 「え? それはいったい何ですか?」


 「侵入経路だよ。」



 「あ! そっか。どこから入ってきたか……。これ重要ですね。」


 「うむ。2階3階を除くとだな、トイレと物置の窓ははめ殺し、クローゼットに窓はなし。そして男女浴場の窓は開けられていなかった。」


 「ああ、そうすると!?」


 「そうだな。1階は玄関ホールの『コの字型』の内側にある玄関側の反対側にある窓が4つ、メッシュさん、カンさんの部屋の窓、それにあとは扉だが……。」




 「裏口のようなものありましたっけ?」


 「君はもうこれだから困る。正面玄関扉以外にはだなぁ。警備室の裏口、キッチンの勝手口がある。勝手口の外にはゴミ置き場があるからな。」


 「玄関扉から入ってきたのでしょうか?」


 「可能性はあるがな。ただ玄関ホールの窓は閉まっていたらしい。」



 おお……。すでに確認済みでしたか。コンジ先生、さすがです!


 では……?




 「そうだな。勝手口か、警備室の裏口……あるいは、カンさんの部屋の窓、メッシュさんの部屋の窓、……そして、玄関扉というわけだ。」


 「玄関扉は鍵がかかっていなかったんですか?」


 「まあ、かかっていなかったと言っているが……。」


 「なら、玄関扉からならアリバイのない人なら誰でも可能性はあるわけですね?」


 「そういうことにはなるが……。誰か外へ出たか確認したが、それはいなかったんだよ。」




 「それでも、人狼が玄関扉を開けて入ってきていたら、わからないですもんね。」


 「あーあー。君は鈍いなぁ。いいかい? 人狼といえどもヒトを襲ってヒトに化ける前は単なる狼だったわけだろ?」


 「ええ。それがなにか……。あ! そっか! 狼が扉を開けて館内に入ってくるって変ですよね?」


 「そうだよ。つまり、玄関扉から侵入してきたっていうのは可能性は低いと考えていいだろう。」




 ……そうなると、キッチンからか、警備室からか、カンさんの部屋からか、メッシュさんの部屋からか……。


 え? そういうことになると……。



 「やっと気がついたかい?」


 「はい。コンジ先生。メッシュさんとカンさんが怪しい……のでしょうか?」


 「カンさんであれば、22時から23時の1時間の間、メッシュさんは22時過ぎに遊戯室から出た後から23時までの間、一人きりだった時間がある。」


 「そうですね。つまりその時間が怪しいと?」


 「可能性は高いと言えるだろう。まあ、もちろん玄関から絶対入ってこなかったとも言えないし、二人が留守の間に侵入してきて、他の誰かを襲ったという可能性もゼロではないがな。」




 「完全にアリバイがあるのが、アレクサンダー神父。そして、著しく可能性が低いのがパパデスさんとスエノさん、イーロウさんだな。彼らは20時34分から23時までの間、ほぼアリバイがあるか、または一人で過ごした時間帯を1階以外で過ごしているのだ。そして、それに準じて可能性が低いのが、僕とエラリーンさん、ジジョーノさん、シープさんだな。ここの4名は一人になった時間が20時34分のすぐ後か、23時間際の短い時間しかない。」


 「ええ!? コンジ先生! 私はどうなっちゃうんですかぁ?」


 「君は途中でシャワーに行った時間があるだろう? 逆に言えば、ジョシュア、ママハッハさん、ビジューさん、ジニアスさん、ジェニー警視はそれぞれシャワーの時間帯、一人になっていてかつ1階にいたわけだ。まあ、カンさんとメッシュさんの疑惑度は時間帯でもそれぞれ先程確認したとおりだ。」






 つまり……。


 容疑度最上位が、カンさん、メッシュさん。


 容疑度上位が、私、ママハッハさん、ビジューさん、ジニアスさん、ジェニー警視。


 容疑度中位が、コンジ先生、エラリーンさん、ジジョーノさん、シープさん。


 容疑度低位が、パパデスさんとスエノさん、イーロウさん。


 容疑なしが、アレクサンダー神父というわけですか。




 「あれ? コンジ先生! アイティさんはどうなんですか!? ひょっとしてアイティさん自身が犠牲になったんじゃあないんですか?」


 「うむ。可能性はほぼないと見ていいだろうな。」


 「どうしてですか?」


 「それはな、考えたらわかるだろうが、彼の遺体が翌朝、玄関ホールで発見されたからだ。」


 「え……?」




 「彼は20時34分以降、22時過ぎにメッシュさんがワインを提供した時間までのアリバイは完璧だ。その後、23時過ぎ、部屋を訪れたカンさんに扉越しに返事をしている。これが生きている彼を確認した最後だったんだよ。23時以降に人狼が侵入したとは考えられないのは、すでに確認しただろう? それなら、彼が最初に襲われたならば、この22時過ぎから23時までの間の時間ということになる。ここまではいいか?」


 「はい。そうですね。じゃあ、その時間に襲われていたかもしれないのはあり得るんじゃあないですか?」


 「そうなると、彼の遺体は深夜、わざわざ玄関ホールに運んだことになるが……。血痕はキッチン前から玄関ホールへと続いて残っていたんだよ。」


 「…ということは、アイティさんの部屋に遺体が隠してあったということは……?」


 「可能性は低いだろうな。血痕を残さず、アイティさんの部屋から遺体を運び、キッチン前から玄関ホールへわざわざ血痕を残していくというのはありえないだろう。」




 そうか……。


 「じゃあ、アイティさんは除外していいでしょうね。」


 「そうだな。しかし、可能性が高いのはそうなると、メッシュさんか。」


 「血痕がキッチン前から続いていたんですもんね。そのキッチンの前の部屋が……メッシュさんの部屋!」


 「そうだ。」




 ****



 ボォーン!


 ボォーン!


 ボォーン!


 ボォーン!


 ボォーン!


 ボォーン!



 鐘が6つ……。


 夕方6時だ。1階のホールの大時計の鐘が鳴り響いた。


 ああ、夕食の時間です。私たちは昨日と同じようにダイニングルームへ向かった。




 2階のダイニングルームの扉を開けると、すでにみなさんが席についていた。


 席順は昨日通りでした。アイティさんはいませんが……。


 この日の晩餐の料理はやはりメッシュさんが作られたのですが、もしかしたら人狼かもしれないとは思えないほど美味しい料理でした。



前菜のサラダは、カナダ風スモークサーモンのサラダ。皿にスモークサーモンを盛り、その上から先ほど混ぜたドレッシングと野菜を乗せれば出来上がり。甘い メープルシロップをお好みで入れるのもカナダ風。カナダではシロップを料理の味付けに使います。


 そして、トマトチリビーンズとウィンナーの輪切りのディッシュ。玉ネギのみじん切りとウィンナー、玉ネギ、豆とコーン、トマト、ケチャップとトマトを弱火~中火で調整しながら炒めたものをパンと一緒に食べました。ミックスビーンズの彩りが良くこんな事件があったとにも食欲が進みます。




 人気のカナダディアン直伝鮭のオーブン焼きも出されました。サーモンに塩コショウをしてディルウィードをかけ、さらにみじん切りにした赤ピーマンをのせ、5gずつにカットしたバターを置き、レモン汁をかける。そして、アルミホイルでサーモンを包みオーブンに入れ、弱火で様子を見ながら焼き、スライスしたレモンをのせて完成。サーモンはカナダでお馴染みの魚ですよね。




 チーズボールも美味しかったです。柔らかくしたクリームチーズと削ったチェダーチーズを混ぜ、5mm角に切ったりんごとクランベリーを混ぜ込みます。そのボウルごと回し、丸くひとまとめにします。ラップの上に砕いたピーカンナッツを置き、丸くしたチーズの塊をのせます。ラップで包み、ナッツを散らして全体につけます。皿にのせ、クラッカーで削り取るようにして食べます。




 スープは、カナダ風ミネストローネ。トマトは湯むき、その他の材料は1㎝角切りにします。ベーコン、玉ねぎ、その他の野菜の順に炒めます。 水、コンソメ、マカロニを加えて煮込み、 野菜ジュースと塩こしょうをで味を調えます。好みでパルメザンチーズをかけます。塩こしょうを抑えてパルメザンチーズをたっぷり入れるのがカナダ風の味です。




 メインは、カナダ風豚ロースのメープルシロップ焼きでした。ワイドライスを塩水でゆで、つけダレに1日付け込んでおいた豚肉を中火のグリルで焼いて、大皿にあげて味をなじませて、そして、茹でたワイルドライスとにんじん、かぼちゃ、いんげんをフライパンで炒め、 塩こしょうで味を調え、豚肉と共に盛り付けて出来上がり。醤油を入れると日本人好みの味になるんです!




 あと、カナダ風メープルマッシュルームも最高でした。1cm程度に切られたすっごく柔らかいジャガイモ……。炒めたベーコン、野菜にメイプルシロップ、塩、コショウを加え、お皿に盛り付けられ、パセリ、粉チーズをかかっていて彩りもいいんですよねぇ。







 あんな凄惨な事件があった後ですが、食事の時間だけは至福の時間でした。



 みなさん……口数は大変少なくなっておりましたけどね。





 ~続く~





※キッチンブックさんのサイト、「多様な文化と大自然が生んだ カナダ料理レシピ20選!お家で作れるカナダの味」の記事からお料理の参考にさせていただきました。

https://www.kitchenbook.jp/topics/1076

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます