第8話 到着1日目・夕食の時間 その2


 この日の晩餐の料理はメッシュさんが腕によりをかけて作ったもので、昼食に続いて本当に美味しかったのです。



 まず最初に、突き出しのアスパラガスと卵のムースが登場しました。


 ふわっふわな2層のムースとトッピングされているクリスピーオニオンが一体化していて、なんとも言えない食感と繊細な味がたまらない。


 次に出てきたコースメニューは、野菜のクリームスープでした。


 数種類の野菜と生ハムをブレンドして、バルサミコ酢とパルメザンチーズのエスプーマ(泡)で仕上げた上品な優しい味のスープが最高!




 さらに、赤鹿のタタキとタルタルがとても素晴らしかったです。


 綺麗な食用花で飾られた皿で盛り付けられた赤鹿のタタキを、クランベリーとヘーゼルナッツソースとパースニップのピューレと2種の味わいが楽しめました。


 そして、やっぱりフォアグラ!!


 フォアグラずきにはたまらないのですが、伝統的な純粋パテから、革新的なムース、テリーヌやスモークのフォアグラなど、とても贅沢な皿がステキ!


 脳が……ふる……。愛に愛に……。あ、このあたりでやめておきましょう……。




 そしてフィッシュのディッシュは、セントローレンス川のヒラメ料理でした。


 レンズ豆や茎野菜をトッピングし、チョリソーとビーツピューレで仕上げてあり、いい味加減で調理された魚と、ブレンドされたソースがうまく絡んで色んな味が絶品!!




 そして、メインコースは、マドレーヌ島のロースト帆立とポークベリーです!


 とても甘みのある地元で採れたロースト帆立と、外はカリッ中はジューシー豚ばら肉。このちょっと変わったコンビネーションが程よくマッチして、色々な風味が口中広がり得した気分になります。


 そして、ジョシュアお楽しみのデザートは、パッションフルーツ&ココナッツアイスとピスタチオケーキ!


 ココナッツボールを割ると、中からパッションフルーツソースとアイスが流れ出す演出がもう最高でした!


 見た目も味も一流の芸術品です! この館に飾ってある名画に負けずとも劣らない。


 メッシュさんは超一流の料理人ですね。


 デザートまで安定して楽しませてくれました。






 もし、食べる機会があれば、ぜひ食べたい! そう思いますね……。本当に。



 ところで、乾杯の後、ようやくこの『或雪山山荘』の主人にて大富豪パパデス・シンデレイラさんがみなさんに挨拶をしました。


 自分が名乗らなくても、わかってるでしょとでも思ってたのかしらね。


 まあ、私とコンジ先生以外の方はすでに面識のある方ばかりでしたから、必要ないと思っていたのかもしれませんが……。




 「あー。みなさん。この雪深いところまでご足労いただき感謝の意をお伝えしたい。ええ……。私がこの館『或雪山山荘』の主人、パパデス・シンデレイラです。そして、このたびお集まりいただいたのは、みなさんにある方をご紹介したい。そういった趣旨もありましてね。……そちらにお座りのなんとも涼やかなハンサムな紳士が、なんと!」


 ここで、いったん、息を切るパパデスさん。


 そのパパデスさんが視線を向けた男性というのが、まあ、ご存知コンジ先生なんですけどね。




 「あの名探偵『黄金探偵』こと、コンジ・キノノウ先生です! みなさん、大きな拍手で讃えましょう!!」



 そして、みなさんが一斉に拍手をする。



 パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ!!



 コンジ先生は、しゅっとその場で立ち、みなさんに堂々と会釈をし、一礼をした。


 そして、コンジ先生が、片手を挙げ、その拍手を制すると、みなの拍手が静まる。




 「メルシーボークー。サンクス。謝謝。ありがとう。ただいまご紹介に預かりましたコンジ・キノノウです。しがない探偵業をさせていただいている者です。」


 ああ……。流暢にフランス語、英語。中国語、日本語で感謝の意を述べ、英語ですらすら自己紹介するコンジ先生。


 この立ち居振る舞いと姿は、さすがにカッコいいです。




 「そして、この隣の女性は僕の探偵助手、ジョシュア・ジョシバーナです。彼女はこう見えて代々伝わる古武術の師範でもあります。むやみに近寄ると痛い目見ますのでお気をつけくださいね!」


 そう言いながらみなさんに向けてウインクをした。


 みなさんがぷっと吹き出し、笑い声を上げる。




 コンジ先生が若干のユーモアを交えながら、私の紹介もしてくれたので、私もあわてて立って、みなさんにお辞儀をして名乗りました。



 「あ! ジョシュア・ジョシバーナです! コンジ先生の助手をしてます。よ……よろしくお願いします!」


 私も英語は話せるので、そこは心配ありませんが、急な自己紹介で何もうまい具合に話せませんでした。




 「キノノウ先生。わたくしはこのパパデスの妻、ママハッハ・シンデレイラですわ! キノノウ先生の名声は聞き及んでおりますわ。ぜひお話伺わせてくださいね。」


 「ええ。マダム。食事の際にでも喜んで。」



 その隣のアネノさんがその後、コンジ先生に向けて話しかける。


 「さきほどご挨拶はさせていただきましたが、アネノ・シンデレイラですわ。私もまたお話伺いたいわ。」


 「もちろん。マドモワゼル。喜んでお聞かせ致しましょう。」




 続いて次女のジジョーノさんが挨拶をする。


 「キノノウ先生。改めてジジョーノ・シンデレイラですわ。私もさきほどは楽しませて頂きました。」


 「ああ。マドモワゼル。喜んで頂けて何よりです。」




 そして、そのお隣はさきほど書斎でお話した末娘のスエノさんでした。


 が、なかなか言葉が出ない様子で、もじもじしているみたいです。



 「スエノ! ほら! みなさまにご挨拶なさい!」


 「スエノーー!! 恥かくでしょう? 私たちが……。」


 「スエノったら! ほらぁ!」


 三人のシンデレイラ家の女性たちが寄ってたかってスエノさんに挨拶をするように勧める。




 「ふむ。この黒髪の魅力的な彼女の名はスエノ・シンデレイラ。このシンデレイラ家の末娘で、長女のアネノさん、次女のジジョーノさんとともにミステリー好きな三姉妹だ。そして、内気な彼女はまだ恋もしたことのないお嬢様で、いつも美しいお姉さん二人に遠慮している。だから、いい男はいつもアネノさんとジジョーノさんにとられてしまう……。


 だが、この場にはいい男が何人もいるから……。安心したまえ。……なあ? 殿方諸君!?」


 と、そう言ってコンジ先生が、アイティさん、イーロウさん、ジニアスさんに目配せをした。





 「あ……ああ! もちろんだよ! スエノさん! 私はイーロウ・オートコという。アメリカで俳優をしている。『権利の上に眠る猫』見たことあるだろ?」


 「あ、僕はジニアス・サッカセンシュア。スペインのプロリーグでサッカーをやっている。よろしくね。」


 「あはは。私はITの会社を経営しているアイティ・キギョーカだ。今後ともお見知りおきを。」





 三人の男性が次々と順不同で挨拶をする。



 「あ……。スエノ・シンデレイラです。よろしく・・…お願いします。」


 声を振り絞るようにしてスエノさんが挨拶を返した。




 「スエノはちょっと内気な娘でみなさん、申し訳ない。」


 パパデスさんがそう言って、みなさんにとりなす。



 うん。コンジ先生。さすがです。こういう機転が利くところは、私、素直に尊敬しちゃうわ。




 「では。ワタクシの番ですな。ワタクシはこのシンデレイラ家の主治医をしておりますドクタ・シュジイ(独太・朱字井)です。よろしく。」


 パパデスさんが長テーブルのいわゆるお誕生日席に座っていらっしゃるのですが、パパデスさんから見て右斜め前の席の初老の男性が挨拶をした。


 おそらく日本人だろうと思われる容姿でしたが、やっぱり日本人のようですね。


 こんな大富豪の主治医だなんて、すごいですねぇ。




 続いて、シュジイさんの隣のエラリーンさんが立って挨拶を始める。


 その隣のイーロウさんがすかさず先に立って、エラリーンさんが立つのをエスコートするのは、さすがだなぁと思わせる。



 「わたくしはエラリーン・クイーンですわ。キノノウ様や、みなさまにはご挨拶はさきほどしましたね。よろしくね。」


 「あ。エラリーンは数年前、ご主人の公爵を亡くされて、その財産をすべて相続されたんだ。」



 イーロウさんの補足が入る。うん。イーロウさん、二重の意味でのスケベゴコロが見え隠れしてますよーー!!



 「ジェニー・ガーターだ。スコットランドヤードで警視をしている。よろしくね。」


 「ビジュー・ツーショウです。しがない美術商です。いやこの山荘の美術品は、~中略~ ……で、以後、お見知りおきを!」




 そして、挨拶は警視のジェニーさん、美術商のビジューさんと続き、最後はアレクサンダーさんということになった。



 「神父のアレクサンダー・アンダルシアといいマス! 信仰心のないモノはこの雪山の化け物に殺されるのデス! 神は信心あるものに救いの手を差し伸べマス。感謝して食事をいただきマショウ! アーメン!」



 と、勝手に食事を始めてしまいました……。


 一同は静まり返ってしまった。





 「……はは。アレクサンダー神父はユーモアがお上手だ。……では、みなさまとの素晴らしい出会いに今一度、乾杯!」


 パパデスさんがそう言って場をとりなし、再び宴はにぎやかになった。




 「乾杯!!」



 そして、この乾杯が、みなが一緒に乾杯をした最後でした……。





 ~続く~




※お料理の参考にさせていただいたお店。

ケベックシティーにあるロマンチックなレストランとして有名な高級レストラン 「Le Saint Amour」。

1978年に開店した老舗レストランで、屋根がガラス張りで多くの観葉植物が天井から吊り下げてあるガーデンルームが人気。


※tripnote(トリップノート)さんのサイト、「カナダでフランス料理?! 最高級のケベックフレンチを堪能!」の記事から。

https://tripnote.jp/canada/quebec-french-restaurant



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