最強召喚士と奴隷少女達の廃村経営~異世界召喚されたけどやることないので、とりあえず総人口6人の村の村長になりました~
第77話 アレンvsアイリス.1(女神暦1567年5月8日/ロクレール支部演習場森林エリア)
第77話 アレンvsアイリス.1(女神暦1567年5月8日/ロクレール支部演習場森林エリア)
アレンは湿気の少ない陽当たりの良い森の中を駆けながら、それぞれの場所で奮闘しているであろう少女達のことを考えていた。
「……皆、そろそろ相手チームとぶつかっていてもおかしくない頃合いかな」
今回はドロシーとシャーリーの因縁にケリをつける為の戦いだ。
しかしながら、ドロシーを始め全員がやるからには勝つという気構えでいる(俺も含めて)。
俺とゼルダとドロシーは敵クリスタルの破壊。
カレンと綴は俺達のチームのクリスタルの防衛。
攻撃組である俺達は分散して敵拠点を叩くことにし、ゼルダとドロシーとは廃墟エリアで別れ、防衛組のカレンはクリスタルの側で待機、綴は廃墟エリア内での索敵を担っている。
絶対に勝てる布陣とは言わないが、それぞれが自分達の役目を全うしてくれることだけは確実に信頼できる。
ゼルダは『
ドロシーは魔力の錬成回路の修復が終わったばかりで、魔力操作もまだまだ覚束ない様子だが、シャーリーと逃げずに向き合うことを決心したあの瞳を見ていれば、勝敗の行方はどうあれドロシーにとって納得のいく結末を迎えるだろうと思う。
カレンは多彩な属性魔法を自在に使い臨機応変な戦いが可能で、魔導士全般に言える弱点ではあるが、近距離戦にさえ持ち込まれなければ十分防衛は可能だと考えている。
綴は軽い身のこなしを活かした俊敏な動きや剣捌き、『髭切』による遠距離攻撃を兼ね備えた近距離戦・遠距離戦のどちらにも対応することが出来るオールラウンダーだ。カレンのバックアップ役として相応しいだろう。
それに彼女達には『
アールタの
そう易々と撃破されることはないと思うのだが……。
「……マスター、皆様のことが心配なのですか?」
「ああ、すまないスフェール。これから戦闘だってのに考え事ばかりしてちゃダメだよな」
「いえ、仲間のことを大切に思って下さるのはマスターのとても素晴らしい所です。フローラ先輩達も付いていますから、きっと大丈夫ですよ」
そう胸元で両拳を握り、こちらを恥ずかしそうに見遣るスフェールの気遣いに感謝しながら、俺は感慨深げに彼女を見詰める。
……この娘は契約した『隷属者』の中では新参者に入るけれど、本当に皆のことをよく見ているからな。
漆黒の外套を身に纏い、新雪のような真っ白な白髪を恥ずかしそうにフードを目深めに被って隠しているが、端正な目鼻立ちが彼女がかなりの美少女であることを証明している。
黒の外套の下には純白のブレザーをしっかりとボタンを留めて着用し、同じく白を基調としたチェック柄のミニスカートを履いている。
左足は膝上まで伸びた白のソックスと黒のブーツ、右足は黒のソックスと白のブーツを履いている。
そして特筆すべきは、彼女が背中に背負っている大剣だ。
鞘はなく漆黒の包帯で刀身を覆い隠している身の丈程の長さがあるそれを、華奢な少女が苦も無く背負っている姿は異様だが、その魔剣を自分の手足のように自由自在に振るう彼女は非常に頼りになる存在だ。
性格はかなり控えめで先輩隷属者達に遠慮してあまり自分の意見を言うことはないが、自分達のことを本心から尊敬していていつも羨望の眼差しで見てくる謙虚なこの後輩のことをフローラ達が可愛がらない筈もなく、皆にからかい半分でギュッと抱き締められると、アワワワッと狼狽するものの嬉しそうに頬を綻ばせる姿にはとんでもない破壊力がある。
うん、もううちの娘達はほんっとうに皆可愛いんだよなあ、もう!
リースに聞かせれば、「また始まったよ、アレンくんの親バカが……」と呆れられるだろうなあと元いた世界の友人の少女のことに想いを馳せながら、俺とスフェールは森林エリアを疾駆する。
しばらく森を駆けていると、「マスター、ストップした方が良いです」とスフェールが立ち止まり俺を片手で制する。
「どうした、スフェール」
「この先に人の気配がします」
「……クリスタルの番をしている『銀翼の天使団』のメンバーかな?」
「恐らくは。こちらから仕掛けますか?」
「俺達のことはまだ悟られていないか?」
「……残念ながら、先方は気付いている様子です。僅かですが相手の魔力が感じられました。こちらの攻撃に備えて警戒しているようです」
「よし、なら下手に隠れず正面から行こう。いきなり斬りかかるんじゃなくて、少し相手と話しをしたい」
「話し合いですか? しかし、これは試合なのですよね?」
「まあ、そうなんだけどね。勿論戦うけれど、彼女にはもう一度お礼を言いたいんだ」
「?」
スフェールは疑問符を浮かべて、俺の意図が掴めず首を傾げていたが、コクンと頷き、
「分かりました。マスターの仰せのままに」
「ありがとう、スフェール。いきなり戦闘には突入しないとは思うけど、警戒だけはしておいてくれ」
「かしこまりました。全力でマスターをお守り致します」
軽く背中の大剣の柄を掴みながら微笑む彼女に頼り甲斐を感じながら、俺達は前へと踏み出した。
「ふっふっふっ、お待ちしていましたよアレンさん」
「やっぱり、貴女がクリスタルの防衛役ですか、アイリスさん」
「ええ、私は『銀翼の天使団』のギルドマスターですから、アレンさんも私が一番強いと踏んでいたからこそ、私がクリスタルの防衛役に回るとお考えだったのでしょう?」
「いえ、アイリスさん方向音痴だから、仲間の人達から『ここから動かないで下さい』って言われてクリスタルの側から離れるの禁止されてるんじゃないかなと思って」
「……ぐすっ」
「あっ、泣かせた。……はっ!? も、申し訳ありません、マスター! つい本音が漏れてしまいました!」
「……スフェール、気遣ってくれるのは嬉しいけど、微妙にフォローになってないよ」
図星を突かれてシクシク目元をこするアイリスと、アワアワと首を振りながら懸命に謝罪を繰り返すスフェールが落ち着くまで5分以上かかりました。
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