第206話 夕食をいただきながら

「どうしてカズさんは夕食を持ってきてくださったのがユーカさんだとお分かりになったのですか?」


 ユーカさんとテツさんが持ってきてくださったお食事をいただきながら、カズさんに尋ねてみました。すると、カズさんはすぐに答えを返してくださいました。


「ハルたちが露天風呂に行っている間に用事があるって言っただろ?その用事が夕食の時間を聞きに行くことだったんだ」


「なるほど、それでユーカさんたちが帰った時間にお風呂を上がってこられたのが大体同じだったわけですね……!」


「ああ、それにその時にユーカからテツと持っていくって言われたからな。だから、持ってきたのがユーカだと知っていたってわけだ」


 カズさんの明快な説明のおかげで、色々と納得がいき、そのままその話は終わりという形になったのです。そして、そこから話し始められたのはマサミさん。


「そういえば、ルビア。ホワイトデーの日に実家までマサルの看病に来てくれたでしょ?母さんから改めてお礼がしたいから、また夏休みにでも遊びに来てくれって言われたんだけど」


 そんなマサミさんの言葉に、ルビアちゃんは顔を真っ赤にしておられました。私としてはホワイトデーにルビアちゃんが出かけていたことは知っていましたが、まさかマサミさんとマサルさんのご実家に行っておられたとは……!


「ちょっと姉さん!」


 横からマサミさんへ声を勢いよく投げかけるマサルさん。おそらく、ルビアちゃんがあわあわしておられるのを見ての行動でしょう。


「あ、ごめん!言わない方が良かった?」


「えっと、その……まさかそのことを言われるとは思っていなかったので、ビックリしてしまって……!」


 どうやら言われたくなかったのではなく、明かされてしまったことがビックリしたようでした。


「そうです、ルビアちゃんはマサルさんが風邪だといつ知られたのですか?」


「それは朝、マサミさんからメッセージを貰ったんです。それで、用事もなかったので看病に行こうと思って……」


 顔を赤らめながら語るルビアちゃんを私はスゴイと思ったのです。それは今朝にマサルさんが風邪だと聞いて、その日のうちに京都へ行ってしまわれた行動力。そこまでの行動力は私にはマネできないのですよ……!


 ワカナちゃんは『その行動力の源は恋の力』とおっしゃるのですが、はたしてそうなのか、私には分からないのですが……


 そんなルビアちゃんがホワイトデーにマサルさんの看病へ行っていたという話はしばらく続き、ワカナちゃんはウキウキしておられましたが、カズさんは混ざりづらそうにしておられるのが私の中で引っかかってしまうのでした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る