第196話 広すぎる離れ

 二階に上がりますと、階段を上がって真正面にお手洗いがありました。そして、階段を上がって右手には広い和室が……!ユーカさんの説明では、二階には和室が二部屋と押し入れ、お手洗いがあるだけとのことでした。


「この和室、広さってどのくらいあるの?」


「ああ、階段を上がって右手にある和室が10畳で、トイレから見て真正面にある和室は14畳になっている」


 10畳と14畳の和室といっても、イマイチ実感が湧かないので、襖を開けて実際にお部屋を見てみますと、ただただ広いとしか言いようがない広さのお部屋でした……!


 それに、お部屋に入った時の和室ならではの畳の香りも鼻をくすぐります。なんだか、おじいちゃんおばあちゃんの家に帰って来たかのような感覚がするのです!


「布団は人数分用意してあるから、3人ずつに分かれて寝泊まりしてくれ」


「オッケー、じゃあマサルとルビアはアタシと同じ部屋ということでいい?」


 マサミさんからの提案に私は異議はありませんでした。ただ、マサルさんが少し顔を赤らめておられたのが気になったのですが……


「じゃあ、じゃんけんで勝った方が広い方の部屋ということでどうだ?」


「お、いいね!そうしよそうしよ!」


 何やらマサミさんとカズさんの間でササッと話がまとまり、アツいジャンケンが始まりました。と言いましても、一回目のじゃんけんはおあいこ。ですが、次で決着がつき、勝ったのはマサミさんでした。


「じゃあ、アタシたちがこっちの広い14畳の部屋を使わせてもらうから」


「ハルさん、ワカナちゃん、なんだかごめんなさい……!」


「いえいえ、大丈夫ですよ!」


「……うん、全然気にしなくていい」


 広い部屋を使うことにルビアちゃんは申し訳なさを感じておられるようでしたが、そもそも10畳でも広いくらいなので問題ナシなのですよ。


 ですが、じゃんけんのことで気分が落ち込んでいる方がもう1人おられました。そう、カズさんです。負けたことで狭い方の部屋になってしまったことを後悔しておられるようなのです……


「カズ兄、元気出して。私もハルお姉ちゃんも気にしてないから」


「そうですよ?そもそも10畳でも十分に広いではないですか!だから、落ち込まないでください!」


「ああ、それもそう……だな。せっかく、遊びに来たんだし、落ち込んでる時間ももったいないか」


 カズさんの声に元気が戻ってこられたことにホッと胸を撫で下ろしつつ、私たちは夕方まで観光に行くことにしました。それからは隣のお部屋のマサミさん、マサルさん、ルビアちゃんのお三方にも話を通し、夕方まで箱根を観光することに決まったのでした!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る