第115話 引き抜き

「カズさん、さすがにそれは無茶なのでは……?」


「いや、店主の顔を見てみろ。明らかに迷ってる」


 そう言われて少年店主さんの表情を見てみますと、分かりやすいほどに迷っておられました。もう一押し……といったところでしょうか?


「……新しく装備を作る時には素材集めには協力する」


 ここでワカナちゃんも説得を始められました。ルビアちゃんはおどおどしておられますが、ここぞとばかりに引き抜こうという流れになれば、そうなるのも分かるような気がするのです。


「……分かりました。じゃあ、ボクをカズ様たちのパーティに入れてください。そうすれば、専属の鍛冶師として色々と装備の方は融通できますから」


 専属の鍛冶師……!何やらスゴイ響きなのですよ!ですが、私たち6人のパーティの装備を見てくれるというのはありがたいです。


 装飾品や戦闘で消費するアイテムはテツさんが作成してくださいますし、これで鍛冶師ブラックスミスの少年店主さんが加われば百人力なのですよ!


 こうして、カズさんとワカナちゃんの説得によって、私たちのパーティに仲間が増えました!


 これで現在活動しているパーティメンバーは7人になるわけですが、あと3人も集まれば10人!これならクランを作ることもできそうです!


「そういえば、次のアップデートではクランの名前とかも決められるようになるらしい」


 そんなふとしたカズさんのこぼれ話。ですが、そんなことを聞いてはクランを作りたくなってきてしまうではないですか……!


「そうだ、店主さん」


「は、はい。何でしょうか……?」


 ルビアちゃんから話しかけられた少年店主さんは顔を赤らめておられます。ですが、見ていて微笑ましい気持ちになってしまいます。そんな時、トントンと肩を指先で叩かれました。


「……ハルお姉ちゃん。少年店主、絶対ルビアちゃんのこと意識してるよね」


「やはりそうですよね?」


「……ルビアちゃんは気づいてないみたいだから、ここからどうなるのかが楽しみ」


 ワカナちゃんがフフッと笑うのにつられて、私も笑顔になってしまいました。ですが、少年店主さんとルビアちゃんの関係に変化があるのかは見守りたいところです!


「……ハル?何ガッツポーズしてるんだ?」


「い、いえ!何もありませんですよ……?」


「嘘つけ、絶対何かあるだろ……」


 私が思わずガッツポーズしていたことをカズさんから追及されそうになったのですが、ワカナちゃんが間に入ってこられたおかげで話をうやむやにすることができました。


 そんなワカナちゃんもこちらへ親指を立てておられるので、気を利かせてくれたようなのです。ワカナちゃん、本当に良い子ちゃんなのです……!

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