第98話 ユーカさんの誕生日

「ユーカさん、誕生日おめでとうなのです!」


「ハル、今日は来てくれて感謝する。とにかく上がってくれ」


「はい、そうさせてもらいますね!」


 私は脱いだ靴を揃えて、ユーカさんの部屋のリビングへ。部屋が南向きということもあってか、今の時間帯は太陽の光が差し込んでいて眩しかったです。


「ああ、すまない。眩しかったか」


「いえ、カーテンを閉めるほどではないので、このままで……!」


 私が眩しさから目元を手で覆ったのを見逃さなかったようで、ユーカさんはすかさずカーテンを閉めようとなされました。


 普段からユーカさんは周りをよく見ていておられて、本当にスゴイと思うのですよ。


「ハル、誕生日会をしようということだったが、何かしたいことでもあるのか?私の部屋には、ご覧の通り何もないのだが……」


「いえ、私はテツさんが来たらケーキでも食べながら3人で楽しく話せればいいかなぁと思っていたのですが……」


「……じゃあ、SdnGで1時間くらいテツが来るまでの時間を潰すとしよう」


「そ、そうですね……!」


 ……こうして、私とユーカさんはゴーグルを装着して、SdnGの世界へとダイブしたのでした。もしかすると、テツさんを入れて3人でSdnGをすることになるのではと思い、ゴーグルを持ってきたのがさっそく役に立つとは……


 私とユーカさんはSdnG内で落ち合い、1時間程度で終わりそうなクエストを受けることになりました。


「それにしても、最近SdnGのプレイヤー人口が増えたような気がします」


「ああ、確かにそうだな。第8回イベントでのホテルとコラボしたのが、知名度アップにつながっているのかもしれない」


「だとすれば、運営の狙い通りということになるのでしょうか?」


 なんにせよ、イベントで上位に入ればケーキバイキングを無料で食べられるようなことがあったのなら、スイーツ女子が飛びつかないはずがありません。


 また、そんなイベントが来た時に上位に入れるように頑張って強くなろうとなされることでしょう。


 ともあれ、私とユーカさんももっと強くなりたいと思っているのは事実ですので、クエストをこなして、ログアウトをしたのでした。


「お、2人ともおかえり」


 ログアウトしてゴーグルを外すと、リビングにはテツさんがおられました。リアルでは緑髪ではなく、茶髪なので印象がまったく違います。


「テツさん、こんにちはなのです!」


「やっぱりハルもリアルだと印象違うなぁ……と、ユーカ。誕生日おめでとう」


「ああ、ありがとう」


 テツさんは手際よくユーカさんに誕生日プレゼントを渡されました。そういって、サラっとプレゼントを渡す時のイケメンオーラは目を見張るものがありました。


 しかも、プレゼントを受け取って照れくさそうにしておられるユーカさんもなにやら新鮮な感じで、微笑ましかったです。

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