第87話 戦士同士の戦い①

「オレ様はバンブスグラスだ。アヤ様の元へは行かせん!」


 バンブスグラス、と名乗った目の前の戦士はカズを見下ろしていた。頭には鬼の角が生えており、それは鬼人族オーガの特徴でもあった。


 そして、剣と盾は炎のように赤い。鎧と兜、篭手、グリーブなどの装備は見た目からトゲトゲしかった。


「バンブスグラス、俺はカズだ。悪いが、そこを退いてくれ。生憎と俺はアヤってヤツに用があるんだ」


「フハハハハッ、それを聞いてはますます通すわけにはいかなくなった。オレ様たちのクランのリーダーを倒そうとしているのなら、オレ様の敵だぜェ」


 ニヤリと笑みを浮かべるバンブスグラス。カズはそれ以上の話し合いをすることなく、容赦なく大剣で斬りかかる。


 凄まじい金属音が幾重にも重なるが、優勢なのはカズ……ではなかった。


「お前、見た目通りパワーが強いな……!」


「まぁな、オレ様はこのでここまで来たんだ。このまま押し切らせてもらうぜぇ!」


 バンブスグラスはカズをたやすく薙ぎ払う。それも片手で。両手剣を片手で軽々と振り回していることで隙も多いが、それは振り下ろされる重撃に耐えられることが前提となる。


「これ、同じ大剣使いとしてはあっさり負けるわけにはいかないな……!」


 カズは戦士ウォーリアの職業補正である身体強化を発動させた。


 そんなカズは身体強化のかかった状態で力強く踏み込む。先ほどの1.5倍もの補正がかかっているのだ。敏捷による速度も段違いに速い。


「待て、バンブスグラスッ!」


 カズを倒したとでも思っていたのか、アヤの元へと移動しようとしているバンブスグラスへと身体強化によって、力が1.5倍に上昇したカズの一撃が振り下ろされる。


「ぐぉぉぉッ……コイツは強い……!というか、お前も戦士ウォーリアだったのか!」


 カズはバンブスグラスも戦士ウォーリアなのかと驚いたが、すぐに力の強さにも納得いくものがあった。


「さすがにオレ様もこんな力には耐えられねぇ!」


「ハァッ!」


 カズの第二撃がバンブスグラスの大剣をすくい上げる。これで胴がガラ空きの状態。


「これで終わりだな!バンブスグラス!」


 しかし、バンブスグラスは左手に持つ盾を大剣と体の間に割り込ませてガードしてみせた。


「チッ!」


「グヘヘ!オレ様がそう簡単にやられるかっ!大バカ者めがっ!」


 そこからはバンブスグラスによる嵐のような連撃が剛撃が叩き込まれる。


 カズも大剣で防いだりするが、手が痺れるほどの威力であるため、カズは何度も大剣を落としそうになる。そんな隙を突いて、攻撃が容赦なく浴びせられる。


 ハルがキヨとの戦いの合間に見たのは、この瞬間だったのだ。

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