第56話 アヤさんのクラン
「そういえば、ハル。クランに入るという話は仲間たちにしてくれたのか?」
……あ、忘れていたのです。
「……その顔だと、すっかり忘れていたようだな。仕方ない、そこのしっかりしてそうな……」
「ルビアです。ユーカさん、よろしくお願いします」
「ああ、よろしく頼む。しっかりしてそうだから、ルビアから他のパーティメンバーに話を通しておいてくれないか?」
「はい、それくらいなら大丈夫です」
ルビアちゃんは笑顔でユーカさんと話しておられます。にしても、ユーカさんの話をすっかり忘れていたとは、私は大バカ者です……
その後は、ユーカさんがルビアちゃんにアヤさんのクランのことを話しておられました。
アヤさんのクランは9月1日に結成されたそうで、私たちが予選で敗退した第5回イベントでは私たち同様、予選止まりだったそうなのです。
ですが、前回の第6回では上位32位にギリギリのところで食い込んだらしく、今回のイベントも張り切っておられるそうです。
「でしたら、今は本選をしている時間帯のはずですのに、ユーカさんは何をしておられるのですか?」
「ああ、私はメンバー落ちしたんだ。予選で成果を挙げるどころか足を引っ張ってしまってな」
「それで、落ち込んでいたからオレが気分転換に散歩でもしようって誘ったんだ」
そうして歩いていたら、私たちと出会った……と。
「アヤさんのクランは何名ほどになったのですか?」
「今は50名ほどだ。ちなみに、クランは10人くらい集まれば結成することができるんだ」
私はユーカさんの口から出た50名という単語に口から心臓が飛び出してしまいそうになったのです。
「それだけの人数をどのようにして集められたのですか……?」
「アヤとマサミが男性プレイヤーをメインに声をかけていったんだ。それで集まったが、半数近くは第6回イベントが終わってからの加入者だ。テツは第5回イベントの時点で頭数を揃えるために私が誘った」
ユーカさんは親指をテツさんへ向けられておられましたが、テツさんは苦笑しておられました。
「でも、それだけの数がいるなら、私たちをわざわざ誘うつもりはないんじゃないですか?」
そうなのです。ルビアちゃんの言う通り、すでに50名もおられるのに、私たちを誘う理由もないはずなのです。
「ああ、正直に言えばわざわざ誘う意味はない。だが、私がハルとまた一緒にパーティを組んで楽しく遊びたい。だから……」
それはユーカさんの紛れもない本心。私はそのように感じました。
「ユーカ、オレはそれだけが一緒にパーティを組む方法じゃないと思う」
「テツ?それはどういう……」
「ユーカ、お前がアヤのクランを脱退すればいい」
「なっ……!?」
テツさんの言葉にユーカさんは心の底から驚いておられるようでした。
そんなお二人を、私とルビアちゃんは黙ってそれを見ていることしか出来ませんでした。
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