第55話 魔道具師

「ハル、久しぶりだな」


「お久しぶりです、ユーカさん」


 私はユーカさんと言葉をかわしますが、本当に久々で懐かしく思えたのでした。


 確か、ユーカさんと最後にお会いしたのは、8月末にクランに誘われた時以来だったはずです。となると、丸2ヶ月会っていないということになります。


「ハルさん、お知り合いですか?」


「はい、私のリアルでの友達です。隣にいる方は存じあげませんが……」


 私はそう言ってルビアちゃんから緑髪の男性プレイヤーへと視線を移します。よく見れば、耳がとんがっているので、人種はエルフでしょうか?


「ああ、自己紹介が遅れたか。オレはテツ。ユーカの彼氏だ」


「なるほど、ユーカさんの彼氏さんでしたか……って、ええっ!?」


「ハル、そこまで驚かなくてもいいだろう……?」


 まさかのユーカさんの彼氏さん登場です!これは驚かない方が無理ですよ!


「補足しておくと、コイツと私は幼馴染なんだ」


「そうそう、ユーカとは幼稚園の頃から知り合いなんだ。といっても、付き合い始めたのは、中学卒業の前になるか」


 中学卒業前……つまり、私とパーティを組んでいた時にはすでに付き合っていたということに……!


「ユーカさん、どうして彼氏さんがいることを黙っていたのですか?いるならいるとおっしゃってくだされば……」


「やっぱり、アヤに知られるのはマズいかと思って黙ってたんだ。すまない」


「いえいえ!ユーカさんが謝られることではないです!むしろ、私の方こそ変なことを聞いてしまって、申し訳ないです!」


 そのままユーカさんと私の間でごめんなさい合戦が始まりそうになったのですが、途中でテツさんが止めに入ってくださいました。


「ユーカ、とりあえず場所を移そう。ここでハルさんと話すのはマズいんじゃないのか?」


「ああ、そうだな。とりあえず、テツの工房に場所を移そう」


 ユーカさんとテツさんが耳打ちしているのを横でルビアちゃんと一緒に見ているのですが、なんだか微笑ましい光景です。


 ですが、お二人に言われて場所を変えることになりました。どうやらテツさんの工房に行くんだそう。


「あの、テツさんの職業は?」


「ああ、オレは魔道具師アイテムメーカーだ。まぁ、後から実装された生産職だな」


 なるほど、魔道具師アイテムメーカーであれば、アイテムを作る場所が必要になります。それで工房へ行く……と。何やら、納得がいきました!


 こうして、ユーカさんとテツさんのおふたりとお会いした場所から歩くこと数分。そこにある質素な造りの工房の門をくぐったのでした。

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