第34話 カズVS.ハル
「ハル、俺と決闘してもらえないか?」
突然の申し出に私はどう答えればよいのか分からず、戸惑いました。
「俺……もっと強くなりたいんだ」
ポツリと零れ落ちるように言葉をこぼされたカズさん。そんなカズさんを見ていて、私は決めました。
「分かりました。決闘しましょう!」
私はカズさんとの決闘を承諾しました。
カズさんがコーイチさんに負けて、悔しいという気持ちは分かります。
ゲームじゃなくても負けたら悔しいと思うのはいいことだと思うのです。それは悔しいと思えるほどSdnGをプレイしたということなのですから。
私は町の郊外で武器を構え、カズさんと対峙しました。
カズさんの大剣と私のサーベル。数メートルほど離れた場所で向かい合い、戦う準備を完了させました。
「それじゃあ、行くぞ!」
カズさんはコーイチさんとの決闘以上の勢いで私の間合いまで踏み込んでこられました。
振り下ろされる大剣をサーベルでとっさに受け止めたのですが、力及ばずで胸元を斬られてしまいました。
しかも、驚くことに今の一撃だけで体力ゲージが10分の1も減ってしまったのです!
こんな威力の一撃を繰り出せるカズさんをコーイチさんが純粋な力で上回ったのはこの目で見ましたが、信じられないというのが今の正直な感想です……!
『アイスカッター!』
私は氷魔法を発動させて、カズさんを近寄らせないようにしますが、放った氷の刃すべてを大剣で切り裂いてしまわれました。
「ハァッ!」
再び放たれる斬撃に私は勢いを殺しきれずに、吹き飛ばされました!
地面をバウンドしていくうちに勢いも弱まり、止まったのですが、目がくらくらすることもあって、続く第二撃も直撃してしまったのです。
これだけで私のHPは4割近くが削られるという状態になってしまいました。
結局、私ではカズさんには手も足も出ず、やられてしまいました。ですが、カズさんに一太刀だけ反撃することが出来ました。
けれど、私の攻撃力が弱かったために、カズさんの守備力を少ししか抜くことができず、ダメージは大して与えられなかったのです……!
こればっかりは、私も悔しい気持ちになりました。私もまだまだ強くならなければなりませんね……!
「ハル、悪いな。決闘になんか付き合わせて。痛かっただろ?」
「いえ、これくらいなんともないのですよ!むしろ、コーイチさんに負けたカズさんの方が傷ついていると思います」
「フッ、そうだな。俺は悔しい。手も足も出なかった。だが、次こそは勝ちたいんだ。だから、俺はもっと強くなる!」
大剣を空へと掲げるカズさんは生き生きとしておられ、先ほどのような暗い表情はどこへやらといったご様子でした。
それにホッとしつつ、私とカズさんはログアウトをしたのでした。
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