第25話-見る-

 さっきストーカーの話をしたけど、これもそれと似た話。


 男は、ある女の私生活を覗いていた。

 街で見かけた女だ。

 面識は無いが、その容姿がもろに好みだった。要するに一目惚れだ。


 でも全く知らない人に声をかける勇気なんか無い。

 ナンパなんかしたこと無いしな。

 で、こっそり後を着けちまった訳だ。


 家さえ分かれば、後は早い。

 職場も、何もかも突き止めて、女が生活を送る様々なところにカメラを仕掛けた。


 そして、仕事の合間や家にいる時に、彼女の姿を眺めた。

 もちろん録画もしていた。

 休日、一日中リアルタイムの彼女の姿を見ていた日もあった。


 彼女の何気ない動作に、男はどんどん惹かれていった。


 ある休日。

 ワイヤレスイヤホンを着けながら料理をする彼女を見ながら、男は呟いた。


「俺のことも見てほしいな」


 その瞬間、彼女が振り向いた。

 とは言っても、カメラに向かってだけど。


 ちょっとドキッとしたが、彼女は別に自分のことを見ている訳じゃない。

 そのことが無性に悲しくなったその時。


『聞いてるよ』


 そう書かれた紙をカメラに向けて、彼女は笑っていた。












 実はこれ………達のなれそめで………

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