ピンチや失敗があったが、乗り越えればそれでいい。――3

 それから何度かモンスターに遭遇そうぐうしたが、ララがなんなく倒してくれた。


 そして、エイリピアを出発してから二時間ほど経ったとき、は姿を現した。


 海底にそびえ立つ石造りの建造物。


 マチュピチュの祭壇を、何十倍にも巨大化したような遺跡。


 シュシュがポツリと呟いた。


「こ、これが、カムラ遺跡、でしょうか?」


 遺跡には、ほのかに発光する線が走り、幾何学模様きかがくもようが描かれていた。おそらく、これが遺跡を封印する魔法なのだろう。


 ララがゆっくりと遺跡に近づき、扉とおぼしき石壁いしかべの前で止まった。


「クゥ、お願い」

「わかったよ、ご主人さま!」


 クゥが石壁に触れる。


「『魔法無効』!」


 クゥの手のひらから波紋のように揺らぎが広がり、遺跡に描かれた幾何学模様をかき消していった。これで、カムラ遺跡の封印は解けたはずだ。


 あとは扉を開けるだけ。


 このメンバーで、一番力持ちからもちなのはサシャだ。サシャの力なら、扉を開けることができるんじゃないだろうか?


「サシャ、開けられそう?」

「やってみる!」


 サシャが扉に両手を当て、「えいっ!」と思い切り押し込んだ。


 ズズズズ……、と地響きのような音を立て、扉が開いていく。


「やりましたね、サシャさん!」

「お見事」


 ミアとピピに褒められて、サシャが「えへへへー」とはにかんだ。


 俺はクゥとサシャの頭を撫でる。


「クゥもサシャもありがとう」

「「えへへへへー♪」」

「旦那さま~、わたくしも頑張りしたよ~! あとでいっぱいなでなでしてください~!」

「わかったわかった」


 負けじと主張するララに苦笑して、俺たちは扉をくぐった。


 扉の先は長方形の通路になっていた。左右の壁に魔石灯ませきとうが並んでいるため、明かりには困らない。


 しばらく進むと、通路は突き当たりになっていた。


「行き止まりでしょうか?」

「いや、上が開いてる」


「むぅ」と唇を尖らせるミアに、頭上を指さしてみせる。


 通路は鉤状かぎじょうになっていて、上方じょうほうに進めた。


 浮上していくと水面みなもが見えた。海はここまでのようだ。


「ここからは歩いていけそうだね」

「空気もあるみたいですよ~、旦那さま~」


 水面から顔を出したララが、俺に知らせる。


「じゃあ、上陸しようか」

「「「「「「了解!」」」」」」


 俺たちは水面から上がり、ララがバブルバリアを解除した。


「『トランス』! 『ウインド』!」


 人型に戻ったララが、魔法で魚体ぎょたいを脚に変え、風を起こして体を渇かす。


 ララは本当に魔法の天才だ。氷魔法以外にも、様々な魔法が使えるらしい。


「旦那さま~」

「わかってるわかってる」


 約束通り、ララの頭を撫でる。


 ララがふにゃんと頬を緩め、ミア、ピピ、シュシュと、さっき撫でられたクゥとサシャまでが、うらやましそうにしていた。


 相変わらずの神獣たちを微笑ましく思いつつ、


「よし、探索をはじめよう」

「「「「「「はーい!」」」」」」


 俺たちは歩き出した。

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