再会した妖精女王の前だが、みんなのスキンシップが相変わらず激しい。――8
「ここが『ブロセルク』か……」
あれから一〇日。
五人の背中にローテーションで乗り、俺たちは、ブロッセン王国の王都『ブロセルク』にたどり着いた。
「
「ここは大陸の端に位置しますからね」
クゥが鼻をヒクヒクさせ、ミアがコクリと頷く。
ミアの言うとおり、ブロセルクは大陸の端に位置し、大部分が海に面している。潮の匂いがするのはそのためだ。
「レンガの建物、いっぱい」
「が、街路樹が、ヤシなのは、珍しい、ですね」
ピピとシュシュが、街の景観を見回して、ほぅ、と息をつく。
ブロセルクはオシャレな印象が強い街だった。
「じゃあ、まずはオレがブロセルクを案内するよ」
「ついてきて!」と、サシャが俺たちを先導する。
「お帰りなさい、サシャ。早かったわね」
声をかけられたのは、出入り口となる門から少し歩いたときだった。
見ると、噴水付近のベンチに、少女がひとり、腰掛けている。
身長はミアと同じくらい。体型はスレンダー。
金色のロングヘアは、毛先がロールのようにカールしている。
瞳の色は緑。
整った顔立ちは明るく、笑顔がよく似合っていた。
歳は俺と同じくらいだろうか。
水色のワンピースを着たその少女は、片手にジェラートのカップを持ち、こちらにひらひらと手を振っていた。
「リラ!」
サシャが、パアッと顔を輝かせて少女に駆け寄る。
「どうしてここにいるの?」
「サシャが手紙をくれたでしょう? 今日あたり到着するって書いてあったから、待っていたのよ」
「とか言って、またお城を抜け出す口実じゃない?」
「いいでしょう、別に? あそこは退屈なのよ。そんなことより、このジェラート、新しいフレーバーなんですって。サシャもどう?」
「食べる!」
少女がスプーンでジェラートをすくって差し出し、サシャがパクッとくわえる。
親しげなふたりのやりとりを眺めながら、俺たちは揃ってポカンとしていた。
そんな俺たちに、少女がニコッと微笑む。
「あなたたちがサシャの仲間ね? シルバ、クゥ、ミア、ピピ、シュシュ。あってる?」
「は、はい。えっと……あなたは?」
「リラ・ディル・ブロッセンよ。よろしくね」
少女の名前を聞いて、俺は目を丸くした。
「ブロッセン王国の第三王女!?」
少女の正体を知り、「し、失礼しました!」と、俺は慌ててひざまずく。
そんな俺に、リラ王女は苦笑を浮かべた。
「かしこまらないで、シルバ。あたし、堅苦しいの苦手なのよ」
「ですが……」
「敬語も禁止。あたしのことは『リラ』って呼んで。様付けは絶対に厳禁。むしろ、フランクに呼び捨てを
「わかりま……わかったよ、リ、リラ」
戸惑いながらも首肯すると、「よろしい」とリラが満足げに頷き返した。
「あなたたちの宿をとってあるから、案内するわね」
リラが立ち上がり、「こっちこっち」と手招きする。
リラのあとに付き従いながらも、俺の頭は疑問符でいっぱいだった。
どうしてブロッセン王国の王女がこんなところに? どうして俺たちのことを知っている? サシャとはどんな関係なんだ?
「リラはオレの友達なんだ」
困惑が顔に出ていたのか、サシャが俺に説明してくる。
「王女なんだけどお
「そっか」
だとすると、リラに俺たちのことを教えたのはサシャなんだろう。
「なるほど」と納得している俺に、サシャがこそっと耳打ちしてきた。
(それから、『例の件』の情報提供者がリラなんだ)
俺は息をのむ。
ブロッセン王国の調査を頼んだのが、王族のリラ!?
思わずリラへ目を向ける。
情報提供者の王女は、
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