課題のために森に入ったが、ハプニングしか起こらない。――6

「ピ、ピピ?」

「先っぽ、ジンジンするぅ」


 見ると、俺の右腕がピピの胸の尖端せんたんこすっている。


「ゴゴゴゴメン!」


 慌てて腕を引くと、ポヨン、と肘が柔らかい物体にぶつかった。


「きゃうんっ❤!」


 クゥの甘い声が聞こえる。


 こ、このポヨポヨした物体は……。


「おっぱい、熱いよぉ」

「やっぱりぃいいいいいいいいい!!」


 予想通り、クゥの豊満な胸が、エアバッグのように俺の肘を受け止め、ムニュンとひしゃげていた。


 クゥが頬を上気させ、ハァハァ❤ と呼吸を荒らげる。


 クゥの胸をこれ以上刺激するわけにはいかない!


 俺は体をひねり、右腕を上に伸ばした。


 こ、これなら、肘で胸に触れることは――


「にゃあっ❤!?」


 ミアがなまめかしく鳴く。


 今度はミア!?


「シルバさまぁ……そこ、切ないですぅ」


 ミアがモジモジと太ももをこすり合わせる。


 ミアの下腹部には、俺の左手が当たっていた。


 どうやら体を捻った際、左手で、ミアのに触れてしまったらしい。


「あわわわわ……!」


 たまらず左手を引っこ抜く。


 その手がなにかに当たり、俺は反射的につかんだ。


 フニョン、と、マシュマロみたいな感触が伝わってくる。


「ふあぁっ❤!」


 シュシュがとろけた声を出す。


 ま、まさか……


 ギギギギ、と、錆びついたような動きで顔をそちらに向けると、


「あ、主さまぁ……」


 俺の左手が、シュシュの胸を鷲掴わしづかみにしていた。


「ゴ、ゴメン!」

「にゃぅっ❤」

「ミア!?」


 左手を引くと、またしてもミアが嬌声きょうせいを上げる。


 慌てて体をよじると、次はピピが鳴く。


 どう動いても、みんなを感じさせてしまうだと!?


 先ほどの刺激で、四人とも敏感になってしまったらしい。


 俺がわずかに身じろぎするだけで、四人はビクン! と体を跳ねさせる。しかも、その刺激がさらに感度を上げてしまうという、負のスパイラル。


「ご主人さまぁ❤」

「シルバさまぁ❤」

「パパぁ❤」

「あ、主、さまぁ❤」


 四人が濡れた瞳で見上げてくる。


 たまらず、俺は叫んだ。


「誰か助けてくださぁあああああああああああああああああああい!!」





 五分後。


「きゅぅん❤」

「にゃぁ❤」

「はうぅ❤」

「ふあぁ❤」


 湖沼の畔には、ピクピクと痙攣けいれんしながら横たわる、四人の姿があった。


「またやってしまった……」


 その中心で、俺は頭を抱えていた。


 トロトロに蕩けた顔に、艶めかしい笑みを浮かべる四人を前に、俺は深く深く溜息をつく。


「ラブコメ主人公でも、ここまでのラッキースケベは起こさないよなあ……」

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