完全なるアウェイだが、正々堂々戦いたい。――10
決断し、俺は迫りくるミノタウロスAに向け、ミスリルソードを突き出した。
ミノタウロスAの目が驚愕に見開かれる。
その戸惑いが、ミノタウロスAの反応を遅らせた。『縮地』のキャンセルが間に合わず、ミノタウロスAが、突き出されたミスリルソードに自ら
ズブリ、と、肉を突き刺す感触が、ミスリルソードの柄から伝わってきた。
『モォ……ッ!!』
ミノタウロスAが
トドメを刺すべく、俺はミスリルソードを引き抜こうとして――ハッとした。
抜けない!?
ミスリルソードが、固まったように動かなかったからだ。
ミノタウロスAが、吐血しながらも、ニィ、と口端をつり上げる。
どうやらミノタウロスAは、腹筋を締めることで、ミスリルソードの剣身を捕らえたようだ。
タダではやられないってことか! 敵ながら
力を込めればミスリルソードは引き抜けるだろう。だが、それは最悪の一手だ。
なにしろ、ミノタウロスAの頭上を飛び越えたミノタウロスBが、俺を狙っているのだから。
跳躍からの豪速の斬り下ろし――『
ミノタウロスBが、技の名前どおり、流星の如く落下してきた。
判断は一瞬。
俺はミスリルソードの柄から手を放し、後ろに跳んだ。
武器を失うことになるが、肉片になるよりはずっといい。
直後、ミノタウロスBの斧が、地面にクレーターを作った。
攻撃は終わらない。
ミノタウロスBが俺目がけて一足飛びし、体を
ミノタウロスBが選んだ闘技を見て、俺は相手の狙いを悟った。
俺を空中に浮かせて、ミノタウロスAがトドメを刺すつもりか!
『旋風刈り』には、食らった相手を空中に浮かせる効果がある。空中では身動きがとれないから、『旋風刈り』を食らった場合、俺にはミノタウロスAの攻撃を防ぐ
もちろん、『旋風刈り』だけで俺を倒せる可能性もある。二段構えの
けど、狙いさえわかれば対処できる!
次の行動を決めた俺は、着地した瞬間に
グッと膝を溜め、全力で地面を蹴り、体を前に飛ばす。
ミノタウロスBは、俺の行動に構わず斧を振り抜いた。体そのものを回転させて振るわれる斧は、まさに『旋風』そのものだ。
横薙ぎに振るわれた斧が、俺の首を刈り取ろうと迫る。
しかし俺は焦らない。
さらに体を沈ませて、斧の軌道から逃れる。
『モォッ!?』
『旋風刈り』を躱されて、ミノタウロスBが愕然とした。
『旋風刈り』は、たとえ防御しても空中に浮かされる。それなら話は早い。防御せずに躱せばいいだけだ。
そして、後退ではなく前進を選んだのには、ふたつの理由がある。
ひとつは、後退してもミノタウロスAに先回りされて、堂々巡りになるだろうから。
もうひとつは、勝負を決するためだ。
ミノタウロスBの
狙いは、大技の直後で上手く動かせずにいる、ミノタウロスBの右腕だ。
ミノタウロスBの右前腕を、俺の
強打を受けたミノタウロスBの腕から力が抜け、握られていた斧がこぼれ落ちた。
俺はその斧をつかみ、顔を上げる。
そこには、先ほどのミノタウロスBと同じように、『流星斬』を繰り出そうとする、ミノタウロスAがいた。
「読んでいたぞ」
俺は牙を
俺と視線が合い、ミノタウロスAが
「せぁああああああああっ!!」
ミノタウロスBから奪った斧を、ミノタウロスA目がけて
当然ながら、空中にいるミノタウロスAに、斧を避ける手段はない。
ミノタウロスAの胸板に、斧がめり込んだ。
『モォ……ッ!!』
ミノタウロスAの胸から血飛沫が舞い、ミノタウロスBの意識が、そちらに逸れる。
その一瞬を、俺は見逃さない。
トン、と軽やかな音を立て、視線を上げているミノタウロスBの、顔の位置まで跳躍する。
ミノタウロスBの顔が強張った。
「
『モオォオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!』
ミノタウロスBの絶叫が、ドーム状の空間に反響する。
『モ、モ、モオォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!』
仲間が
先ほどとは真逆の構図。空中にいる俺に、斧を避ける手段はない。
斧が振り抜かれれば、俺は真っ二つにされるだろう。
だから、俺は仲間に頼る。
『ミア、頼む!』
『お任せください!』
ミノタウロスCを倒していたミアが、即座に応じてくれた。
ミノタウロスA、Bを相手取りながら、俺はミアの戦況も確認していたんだ。
ミアの姿がかき消えた。
疾風が駆け、
ジャリッと地面を鳴らし、ミアが現れる。
刀についた鮮血を払うミア。
直後、斧を溜めたままの体勢で、ミノタウロスAの頭が、コロリ、と落ちた。
ミノタウロウAの体が灰になり、腹に刺さっていたミスリルソードが解放される。
着地とともに、俺は落下するミスリルソードをつかんだ。
「はあぁああああああああああっ!!」
一閃。
両目を潰されて悶え苦しんでいたミノタウロスBの胴体を、真一文字に両断する。
『モ……ォ……』
ミノタウロウBも灰となって崩れ、三個目の魔石が転がった。
「ありがとう、ミア。助かったよ」
「お安いご用です!」
完璧なタイミングで援護してくれたミアを、俺は
サラサラの白髪を優しく撫でると、ミアは頬をふにゃりとさせた。
猫耳がピコピコと動き、尻尾がフリフリと揺れる。
さっきまでの鬼神の如き戦い
「それじゃあ、ソルクリスタルを採取しようか」
「はい!」
俺とミアは無事ソルクリスタルを採取し、帰路についた。
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