事情も立場もいろいろあるが、彼女を救えないなら意味がない。――11
「ここまでコケにされたのは、はじめてだ」
ミアに蹴りとばされたデュラハンが、ガラガラと瓦礫を押しのけながら、ドスの利いた声を出す。
「許さん許さん許さん許さん許さんぞ! 貴様らはただでは殺さん!
「来たれ、我が奴隷ども!!」
デュラハンの呼びかけに応じ、ポッサの広場に無数の戦士が現れた。
「我の『
デュラハンが勝ち誇り、冒険者たちが
俺たち五人は、互いに背中合わせとなった。
「ご主人さま、どうする?」
「確実な手は、ピピに乗せてもらって逃亡することだ」
尋ねてきたクゥに、冒険者たちの挙動を油断なく
「シュシュは『隷属』スキルから解放されたから、もう、デュラハンに居場所を悟られることはない。ここは、逃げるのが一番の得策だよ」
これだけの数の冒険者が相手では、
そう。それが正解。確実にみんなの命を保障する、唯一の手段。
しかし、俺は、後ろめたさでいっぱいだった。
だって、ここで俺たちが逃げれば、デュラハンを止める者がいなくなるから。間違いなく、ポッサはデュラハンに
それでも、俺が打つべき手は『逃げ』なんだ。みんなのためを思うなら、それが最善なんだ。
俺は罪悪感を押し殺し、
「けど、シルバさまは、ポッサの方々を見捨てたくないのですよね?」
ミアの指摘に、目を見開いた。
「ん。パパは、困ってるひとたちがいたら、助ける、ひとだから」
ピピが頷き、ミアに賛同する。
「でも、それじゃあ、みんなが……」
「気にしなくていいよ」
戸惑う俺に、クゥがカラッとした笑顔を見せた。
「ボクたちは、そういうご主人さまが好きなんだから!」
「苦戦は元より覚悟のうえです。わかったうえで、わたしたちはシルバさまについてきたのですから」
「パパは、パパのしたいように、すればいい」
三人の言葉に、俺の肩から、ふっと力が抜けた。
そうだ。ドッペルゲンガーと戦ったときもそうだったじゃないか。
みんなが求めているのは、俺らしい俺――困っているひとを見捨てずに、身を
だから、俺は言った。
「ゴメン、みんな。俺と一緒に戦ってくれ」
「「「もちろん!」」」
ピンチのただ
俺は静かにミスリルソードを構える。
ここから先は、全力で戦い、五人で生き残るだけだ。
張りつめる空気。
「やれ」
デュラハンが、ただ一言命令を下した瞬間、『隷属』された冒険者たちが、雄叫びを上げて突っ込んできた。
腹をくくり、俺は身構え――
「「「「「「「「『ライトニングウェーブ』!」」」」」」」」
青白い
俺たちに迫っていた六〇名の冒険者が、
「「「「「は?」」」」」
その光景を目にして、俺たちはただ、呆気にとられていた。
「一番隊突撃――――――っ!!」
俺たちが立ち尽くすなか、号令が響き渡り、ミスリル装備に身を包んだ騎士たちが、
騎士たちは稲光の衝撃から立ち直った冒険者たちと相対し、交戦をはじめた。
彼らとともに一〇日以上過ごしたんだから、間違えるわけがない。
いま、冒険者たちと戦っているのは、王国騎士団一番隊だ。
けど、どうして? 俺は王国騎士団と縁を切った。王国騎士団は、ワンで態勢を整えているはずなのに……。
「なにが起きているんだ?」
急な展開に頭がついていかず、俺は呆然と呟く。
「ご主人さま、危ない!」
そこに響くクゥの悲鳴。
振りかえると、忍び寄ってきた冒険者が、メイスを振りあげていた。
俺は舌打ちし、ミスリルソードで受け止めようと構える。
瞬間、一陣の風が駆け抜けた。
風に斬り刻まれ、俺に奇襲を仕掛けた冒険者が崩れ落ちる。
「なにをボケッとしている。貴様は俺に勝ったんだ、この程度の敵にやられるなど許さん」
俺は、またしても目を丸くした。
風とともに現れたのが――ゲイルリープで冒険者を撃退したのが、フリードだったからだ。
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