彼女には裏があったが、それでも俺は見捨てない。――4
「リアルに、
街道を目指しながら俺はぼやく。
王国騎士団の
「みんなは松明型魔導具を持たなくて大丈夫なの?」
「ご主人さまの側にいるから平気!」
「うん。まあ、これだけ密着してたら、明かりには困らないだろうけどね?」
力なく笑う俺は、三人に身をよせられていた。
右側にはクゥが抱きつき、左腕にはミアが腕を絡め、ピピは背中に
誰もが
それはそれとして、松明型魔導具がひとつだけという現状には不安がある。
俺たちは、どんなときでも密着していられるわけじゃないんだから。
「いまは問題ないけど、モンスターが現れたら危なくないかな?」
街道にだって、モンスターは出現する。
モンスターと
その際、松明型魔導具がなければ、不利になることは
松明型魔導具を持っている者は大丈夫だろうけど、残りの三人の負担が大きすぎる。
「問題ありません、シルバさま。わたしたちは夜目が利きますから」
俺の
「たとえ戦闘になったとしても、
「ピピたちにとって、お昼と、いまとは、変わらない」
「ホント、神獣ってなんでもありだなあ」
三人のスペックの高さに、俺は笑うほかない。
にぎにぎしく歩いていると、ふいとクゥが鼻をヒクつかせ、目付きを鋭いものにした。
「ご主人さま、モンスターの臭いがする」
クゥの指摘に、俺たちは即座に臨戦態勢をとる。
密着していた三人が離れ、俺を取り巻くように円陣を組んだ。
俺もまた、松明型魔導具を右手から左手に移し、ミスリルソードを抜く。
「パパ、大変」
張りつめる空気のなか、ピピが静かに、しかし、わずかに動揺を
「どうした、ピピ?」
「騎士さん、倒れてる」
ピピの指摘に、俺は息をのむ。
「見張りの騎士か!?」
「多分、そう。三箇所に、ふたりずつ」
ピピの言うとおりなら間違いない。倒れているのは、
――私たちが真相に近づいている以上、魔公が表に出てくる可能性もある。一層の警戒をしないといけない。
シェイラさんの言葉が
早くも仕掛けてきたか!
「みなさん、来ます!」
ミアが声を上げ、同時、ガシャガシャと、金属と金属が擦れるような音がした。
「やあっ!」
「ふっ!」
「えい」
いくつもの激突音と、三人の声が入り混じる。
みんなが
瞬時に予想を立て、俺は覚悟を決めた。
ミスリルソードを構え、ふー、と長く息をついて、精神を集中させる。
来るなら、来い。
「ご主人さま、一体、そっちに行ったよ!」
クゥが叫んだ直後、松明型魔導具の明かりにギラつく、巨大な斧が振り下ろされてきた。
即座に俺は横に跳ぶ。
炸裂。
爆音。
振り下ろされた斧が、地割れを生んだ。
恐るべき破壊力に目を見張りつつ、襲撃者の正体を確かめるため、俺は松明型魔導具を向ける。
そこにいたのは、漆黒の全身鎧を身にまとい、巨大な
「『ダークナイト』――魔人クラスの登場か」
危険度Sランク。人族・亜人属と同じようにスキルを保有する、上位種のモンスター。
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