四体目の神獣と再会したが、彼女には事情があるらしい。――8

 想像だにしなかった答えに、俺はキョトンとしてしまう。

 三人も、「「「ふぇ?」」」と目を丸くしていた。


「えっと……俺たちと一緒にいるの、イヤかな?」

「そ、そんなこと、ないですっ!!」


 少なからず傷付きながらくと、シュシュはブンブンと、頭が取れそうな勢いで首を振る。


「じゃあ、どうして? ボクたち、シュシュと仲良くなりたいよ」


 クゥが尻尾と耳をシュン、と垂れさせる。ミアとピピも残念そうな表情だ。


「その……じ、事情が、あるんです……どうにもならない、事情が」


 ひどく申し訳なさそうな声で謝るシュシュは、カタカタと震えていた。


 おそらく、仲間になることを拒んで、嫌われてしまうんじゃないかと不安になっているんだろう。


 俺は小さく息をついて、シュシュの頭に手を置いた。


 ビクリと震えるシュシュをなだめるように、優しく頭を撫でる。


「大丈夫だよ。シュシュにはシュシュで、やらないといけないことがあるんでしょ? 俺を追ってきてくれただけでも嬉しいよ。だから、そんなにおびえないで? 俺たちはシュシュの味方だから」


 きっとシュシュは、ミズガルドに来てから、俺への恩返し以上に大切ななにかを見つけたんだろう。


 少し寂しいけど、俺はシュシュの意思を尊重そんちょうしたい。シュシュの人生は、あくまでもシュシュのものなんだから。


「申し訳、ありません……」


 それでもなお、シュシュは涙声のままだった。




     ○  ○  ○




「あ、主さまたちは、ここに、どのような目的で来たんですか?」


 しばらく頭を撫で続けた後、落ち着いたシュシュが、俺たちに尋ねてきた。


「ご主人さまは冒険者で、クエストのために来たんだよ!」

「シュシュさんは、『刺客の捕縛』クエストというのをご存じですか?」

「ワンからやって来る、フィナルのひとたちを襲う『刺客』を、捕まえるクエスト」


 三人の答えを聞いて、シュシュがコクコクと頷く。


「は、はい! 先日も、ぼ、冒険者の方々が、フィナルのひとたちを襲う、暴漢を捕まえていました! その暴漢は、し、『刺客』、だったのですね?」

「俺たちの目的も同じ。『刺客』を捕まえることなんだ」


 説明を終えると、「で、でしたら!」と、シュシュが両拳を胸辺りまで持ってきて、真剣な顔をした。


「あ、あたしも、お手伝いします! その……あ、あたしは、主さまたちに、ついていけませんから」


 言いながら肩を落とすシュシュに、俺は穏やかに苦笑する。


「謝らなくてもいいよ。手伝ってもらえるなら、是非ぜひともお願いしたいな」


 うつむいていたシュシュが、勢いよく顔を上げて、俺の両手をギュッと包み込んだ。


 女の子に手を握られてドキッとしていると、シュシュは涙をポロポロこぼしながら微笑む。


「あ、ありがとう、ございます! あ、あたし、せめてもの力に、なりますね!」


 その笑顔に、どこか胸を締めつけられるのは、なぜだろう?

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