俺は王国騎士になれなかったが、協力要請がきたらしい。――6
あのあと、シェイラさんが駆けつけて場を取りなそうとしてくれたが、もはや俺とフリードは後戻りできなかった。
三人を
俺たちを止められないと悟ったシェイラさんは、諦めの表情を浮かべながら、王国騎士団の訓練場を貸してくれた。
無論、俺とフリードの決闘のためにだ。
そしていま、俺は訓練場の隣にある控え室で、ミスリルアーマーを装着していた。
「なに、あいつ! 腰抜けとか最底辺とか、ご主人さまをバカにしてぇええええええええええっ!!」
「思い出しただけで殺意が湧きますね」
「パパと、一緒に戦えないの、悔しい」
クゥが
「腰抜けはあいつのほうじゃん! ボクたちを決闘に参加させないなんてさ!」
クゥの言うように、フリードは三人の参戦を認めなかった。
「神獣が戦うのでは、貴様との決闘とは言えないだろう?」
とのことだ。
無論、
「あの男は、わたしたちを恐れただけではありませんか!」
その通り。いくら王国騎士団の(元)隊長といえど、神獣には敵わない。
だからこそ、フリードは俺との一対一を望んだ――自分が確実に勝てる状況に持ち込んだんだ。
三人がいなければ、俺の『使役』スキルで役に立つのは『感覚同期』くらいで、ほとんど無意味となる。
つまり、この決闘において、俺は圧倒的なハンデを背負わされたんだ。
「いまからでも、遅くない。文句を、言いにいこ?」
ぼんやりとした顔付きに、たしかな怒りを滲ませて、ピピが提案する。
それでも俺は、首を横に振った。
俺に退くつもりはない。
「いまさら条件を変更してもらうつもりなんてないよ。俺はフリードの狙いを知っていながら、あえて受けたんだからね」
不利なのは元よりわかっている。
それでも逃げるわけにはいかないし、文句もつけたくなかった。あんな男に、
「シルバさま、勝算はいかほどでしょうか?」
俺の決意が揺るがないと察したのか、ミアが心配そうに眉根を寄せながら
俺はミスリルアーマーを装備する手を
その手はかすかに震えていた。
「はっきり言って、勝てる見込みはない」
俺の答えに、三人が息をのむ。
「フリードは『
フリードは、Sランクスキル『
性格がねじ曲がっていても、フリードの実力は本物。俺の勝算は
俺の説明を聞いて、三人が泣きだしそうな顔をする。
俺もフリードと戦うのは怖い。正直、いますぐ逃げ出したいくらいだ。
だけど逃げない。譲れないものがあるから。
俺は緊張に
「それでも、やれるだけやってみるよ。みんなをバカにされたまま、黙っていられるはずがない。逃げ出すくらいなら死んだほうがマシだ」
「ご主人さま……」
「シルバさま……」
「パパ……」
三人が涙を
「ありがとう、ボクたちのために戦ってくれて」
「もう、わたしたちは止めません」
「ん。パパの応援だけ、する」
不安げに瞳を揺らしながら、カタカタと体を震えさせながら、それでも三人はエールを送ってくれた。
「「「負けないで」」」
俺は三人の思いに、頭を撫でることで答える。
「ありがとう、みんな。なによりも力になるよ」
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