俺は王国騎士になれなかったが、協力要請がきたらしい。――3
「さて。では、今回の依頼についての話をしよう」
俺が
「シルバくんたちは、依頼内容が『ワンとフィナルの抗争を鎮静すること』だと聞いているね?」
「はい。込み入った事情があるとも」
シェイラさんがコクリと首肯した。
「事情とは一体なんなんですか?」
「今回の抗争に、魔王軍が関与している可能性があるんだ」
俺は
「抗争の裏で、魔王軍が
「おそらくね」とシェイラさんが首肯する。
「ワンとフィナルが抗争をはじめてから、それぞれの村に魔獣が出現するようになったんだ。それまでは現れることなど
「なるほど。その魔獣を引き入れたのが魔王軍だということですね」
「そういうことだ。そこで、シルバくんに声をかけたというわけだよ。きみたちは魔公討伐者だ。魔王軍が相手となると、きみたち以上に頼りになる者はいない。きみたちがいれば百人力だよ」
「むぅ? シェイラは思ったより見る目があるね」
「私は事実を口にしたまでさ」
ニッコリ笑うシェイラさんに、クゥが腕組みをして「うんうん」と頷く。
「シェイラはご主人さまの真価をわかっているね。ボク、シェイラのことを誤解してたみたいだよ。シェイラはいいひとだね!」
「そう言ってもらえると嬉しいよ」
クゥがひとを見る際の判断基準は、『俺を認めているか
なんとなく、いつか騙されるんじゃないかと心配になる。
「納得がいきませんね!」
シェイラさんとクゥが
俺をギロリと睨みつける、フリードさんの眼差しには、悪意がありありと浮かんでいる。
「この男は平民なうえ、Fランクスキル保有者。社会的に最底辺の
いきなり
敵視されているとは感じていたけれど、こんなにもこき下ろされるとは想像だにしなかった。
フリードさんも、冒険者登録をした日に俺に絡んできたダビッドと同じ、低ランクスキル差別派なのだろうか?
それにしては、フリードさんの表情からは、若干、
疑問を抱く俺は、冷え冷えとした空気を隣から感じ、身を震わせた。
三人が、恐ろしいほどの真顔でフリードさんを
うわぁ……みんな、見るからに殺気立ってる! 俺のために怒ってくれるのは嬉しいけど、王国騎士団の詰所で問題を起こしたら、
焦りを覚えた俺が、三人を
「口が過ぎるぞ、フリードくん」
それまで温厚な雰囲気だったシェイラさんが、底冷えするような声でフリードさんを
「シルバくんたちは、こちらの要請に応じてくれたんだ。感謝こそすれど、立場やスキルランクを
「しかし、団長!」
「そもそもシルバくんは、きみの尻拭いをしてくれた恩人だ。彼を
にべもなく、シェイラさんはフリードさんを一刀両断する。
「恥とは、いまのきみのことを指すんだよ」
シェイラさんに
「席をはずしたまえ。頭を冷やしてくるといい」
「……失礼します」
シェイラさんの指示に、感情を押し殺した声で答え、フリードさんが退室する。
部屋を出る直前に向けられた、憤怒に染まったフリードさんの目に、俺は肝の冷える思いをした。
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