第177話 問題が山積しています
「残った問題は、誰がブリュンヒルデ様を仮死状態にしたのか、よね」
「見舞いを邪魔したのも問題だわ」
「それは感染防止の観点から納得できると思いますが」
ヴィルヘルミーナの提起に、王妃自身が参戦し、最後に苦笑いしてメフィストが宥める。奇妙な構図の足元で、ベルンハルトは婚約者の腰を抱き寄せた。自分はこんなミスは犯さないと固く誓う。アゼリアは魔王のスキンシップの激しさに押され気味だった。
「イヴリース、だめよ」
「そなたを前にして我慢や理性など……」
ちゅっと音を立てて唇以外にキスを降らせる。さすがに口付けを直接見せつける気はないらしい。というより、兄や叔父であっても異性にアゼリアの愛らしい姿を見せたくないようだ。独占欲の塊である。
ちなみに魔王イヴリースにとって、宰相メフィストは嫉妬対象から外れる。家具と同じ、常にいるのが当たり前だった。
「真面目な話の最中です、魔王陛下」
「……余はいつも真面目だが」
「陛下、大人しくしないと閉じ込めますよ」
ベルンハルトの嗜めに憮然として切り返した魔王だが、側近が鍵束を意味ありげに揺らすと口を噤んだ。地下牢の話が出ていたが、本当に閉じ込められた過去がありそうだ。
「ブリュンヒルデ殿の病のことか」
仕方なく話に参加する。そんな態度を崩さず、さりげなくアゼリアを膝の上に座らせた。呆れ顔だが、アゼリアも抵抗しない。大人しくしていてくれるなら、膝の上くらい我慢する。そんな彼女の姿勢に、他の女性は苦笑いした。
どの家でも女性が強く、家計をまとめて一族を統率するスタイルは変わらないらしい。いや、獣人だからだろうか。獣の本能として女性優位になりがちな獣人は、関係が危うくなると男が黙る傾向があった。
「その辺りは探らせましょう」
シャンクスに……そう匂わせたメフィストに、イヴリースが許可を出す。王妃の入浴を覗いた罪で、足置きの刑に処されていた。シャンクスは馬車と一緒に置いて行かれたが、今は天井裏でこっそり話を聞いている。すっと気配が薄くなり、シャンクスが動いた。
「同盟関係の締結も、早めた方が良いかも知れません」
メフィストが唸る。何やら懸念材料を掴んでいるようだ。3人の王はそれぞれに、国内外の敵対勢力を思い浮かべた。時間を掛けるほど、敵対勢力が付け入る隙を与える。敵に準備の時間を与える理由もなかった。
「いっそ、ここで決めますか」
ベルンハルトが提案すると、少し考えてブリュンヒルデも同意した。ノアールは「ヒルデがそれでいいなら」とあっさり頷く。事実上の女王と判断して間違いなさそうだ。
「余は構わぬが……」
「ベリル国はどうしますか?」
イヴリースが懸念を示すと、その部分をすかさずメフィストが補足した。4ヵ国の同盟になる予定だったが、いきなり誘拐してきて同盟締結は可能か?
悩む王達に、アゼリアがぽんと手を叩いた。
「解決できる方法があるわ!」
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