第256話、VS、巨人族
冒険者ギルドで、ギルド長補佐のアルリーンに会った。
ソウヤ以外の白銀の翼の面々が九名。きちんと戦闘集団が現れたことで、ひとまずホッとするアルリーン。
「補給物資は用意してあります」
食料、医薬品の箱、飲料水用の樽、予備武器や防具、休憩所に使うだろう折りたたみ式天幕などなど。
「これらを運ぶ人員をかき集めたのですが……」
「天幕はいらんだろう」
ソウヤは思わずツッコミを入れた。
「いったい誰だよ、こんなもん運ぼうなんて言ったのは!」
ポーターを何人引き連れていくつもりなのか。ダンジョンの中だ。遠足ではない。
「とりあえず、ガイドと補充の戦闘員と救護員くらいでいい。荷物はこっちで全部運べる!」
ダンジョンのある町なのだから、経験豊富なギルドかと思ったら、何だか素人の集まり臭がしてきた。ひょっとしてマトモな人材は全員、戦闘に出払っているというオチではないだろうか。
クリュエル冒険者ギルドの内情は知らない。時間が惜しいから、追求もなしだ。さっさと物資をアイテムボックスに回収して出発する。
「ラードナー、Dランクのレンジャーです。よろしくお願いします」
案内役の青年冒険者が挨拶した。
「よろしく。早速だが、先導を頼む」
ソウヤは促し、今回動向する補充要員の自己紹介もまだの中、とりあえず移動する。名前の確認は、移動しながら行う。
いまも前線で戦っているここのギルドマスターと上級冒険者たちの安否が気になる。ギルドが、どうにもパッとしなかったせいで、不安が加速した。
クリュエル・ダンジョンは、町を出て、数百メートルほど先にある小山に入り口があった。その山の南北は複数の山が連なり、一種の壁となっている。
もしダンジョン・スタンピードが起きれば、出てきたモンスターはクリュエルの町のほうに進むという格好だ。
そのダンジョンの入り口には、下級の冒険者が十名ほど警備に立っていた。中の冒険者の退路確保のためか、あるいは伝令なのか。
先導のラードナーが、ソウヤたちが援軍と物資を運んでいる旨を説明。おかげで白銀の翼一行は問題なくダンジョン内に入ることができた。
「へぇ……」
入り口入ってすぐには魔石の照明があって、明かりを提供していた。その光が、ダンジョンの天井や壁を虹色に輝かせていた。
「綺麗なもんだ」
「表面の鉱物のせいだろう」
ジンが告げた。
「成分が違う岩が、光によってそれぞれの色に見えるんだ」
「見た目は綺麗だが――」
ライヤーは首を振った。
「宝石未満だろうな、これ」
「宝石だったら、もうとっくに掘りつくされているだろうな」
ソウヤは先導に続いて、ダンジョンを進む。時々現れるスライムやコウモリは、早期に迎撃。それを除けば、少々地形が険しかったりするが、割とスムーズに進めた。
それもこれも――
「結構、広い洞窟だな」
道が狭かったりすれば、巨人族だって通れないだろうから、放置するという手もあったかもしれない。
だが現実には、巨体を誇る巨人族も余裕で通れるくらい高さがあって、道幅もあった。
しばらく進めば、正面から戦闘音が聞こえてきた。それまでも時々、獣の咆哮じみた声が聞こえていたが、これはいよいよ戦いが近い。
斜面があった。室内スキー上みたく広く奥行きがある。こちらは上で、下のほうに目を向ければ、おおよそ中間地点で巨人族と、冒険者たちが戦闘を繰り広げていた。
「間に合ったな」
ソウヤは斬鉄を握り込む。ミストも竜爪槍を構えた。
「ふふ、いるいる!」
獲物を前にした肉食獣よろしく、ミストの戦意はすこぶる高い。
「ミスト、ざっと見たところ、どれくらいいる?」
「最前線にジャイアントが三、オーガが六、ゴーレムが三といったところね」
魔力眼を使っているのか、ミストの目が淡く輝いている。
「冒険者は九、いえ、いま八人になった。負傷者が近くにひと塊になっているわね。これは早く駆けつけないと全滅かもよ?」
「なら、突撃だ!」
言うや否や、ソウヤは駆け出した。ミストも加速の魔法を使ったのか、飛ぶように戦闘へと突っ込む。
「ソウヤさん!」
ラードナーが困惑したような声を発した。増援組は、状況を見てどうすべきか判断に迷っているらしい。
お前ら、それでも冒険者か!――というのは置いておく。
「負傷者がいるらしいから、そいつらを救助しておけ!」
そう叫び返してから、ソウヤは足を早めた。
ミストが先頭。ガルとアフマルがそれに続き、ソウヤの近くにはオダシューとグリードが追従した。
「どっせぇぇーいっ!」
ミストが掛け声と共に跳躍。標的に定めたオーガに飛び込み、自身の三倍はある体躯を誇る人食い鬼の頭をすれ違いざまに吹き飛ばした。
水平斬首。その切れ味、ギロチンの如し!
苦戦する現地冒険者らに金棒を振り下ろそうとしているオーガにガルとアフマルが飛びかかり、急所ともいうべき脇腹や側頭部に武器を突き入れる。血がほとばしり、オーガが苦悶の声をあげる。
「味方か!?」
地元冒険者が安堵の声を上げる。ソウヤたちは、彼らをすり抜け、敵に向かう。
筋肉ムキムキの巨人といったジャイアントが斧を振り回す。当たれば、人間など鎧ごと真っ二つの剛力。
しかしソウヤが思い切り斬鉄をぶつけてやると、ジャイアントの手から斧が吹っ飛んだ。
「その程度の力じゃあ……!」
ソウヤは、驚くジャイアントの懐に飛び込む。
――魔王のペットにも勝てないぜ!
斬鉄で一閃。ジャイアントの体が上下に真っ二つになる。それだけに留まらず、分断された上半身がコマのように回転しながら斜面を落ちていく。
「うはっ! ボス、本当すげぇ!」
オダシューが歓声を上げながら、別のジャイアントに戦斧を叩きつけた。
形勢は逆転した。ソウヤたちの加入で、最前線の巨人たちは次々に倒されていった。
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