第162話、ガーディアン・ゴーレム
「洒落臭い!」
ミストが竜爪槍を軽く回した後、騎士ロボットのような外観の岩ゴーレムに突進した。
ゴーレムの腕から伸びる爪が、ミストを迎え撃つ。激しく衝突。槍と爪がぶつかり、双方が後退する。
「いい動きをするわね……!」
「見た目も堅そうだ」
ソウヤは斬鉄を構える。
「手伝おうか?」
「まだ、もうちょっとワタシにやらせて」
ミストは再びゴーレムに向かった。対するゴーレムは腕の爪を発射した。
「甘いッ!!」
槍を回転させて、飛んできた爪を弾く。さらに肉薄。渾身の一撃をゴーレムの胴体へと放とうとするミスト。
胴に迫った槍は、しかし割り込んだゴーレムの腕に阻まれる。だがその瞬間、腕が粉々に吹き飛んだ。
「やっるぅ、さすがミスト師匠!」
ソフィアが喝采をあげる。しかし、ジンが眉をひそめた。
「危ない!」
ゴーレムの上半身がコマのように回転し、逆回転した片腕が、ミストの側頭部を直撃した。人間や生物なら体が一回転しないが、相手はゴーレム。その動きは彼女の予想外だった。
「ミスト!」
吹き飛ぶミスト。岩のゴーレムの強打など、普通の人間なら頭蓋骨粉砕もので即死だろう。
ドラゴンといえど危ないのでは? ソウヤの怒りが一気に燃え上がる。
「くそったれ!」
「よくも師匠を!」
ソフィアが杖を掲げた。
「サンダーボルト!」
杖の触媒から凄まじい電撃が放たれた。ゴーレムは左腕でガードするが、電撃は岩の腕を穿ち、そして砕いた。
「無駄よ!」
ソフィアが吠える。
しかし、ゴーレムはひょいと後方へ跳躍して距離を取ると、再び上半身を回転させた。するとなくなった腕の部分に土砂が集まり、それは先ほどまで存在していた腕の形を形成した。
「ほう、再生能力があるのか」
ジンが顎髭を撫でる。その冷静にソウヤは思わず「感心してる場合か!」と声に出る。
一方、倒れたミストのもとにセイジが駆けつける。
「大丈夫ですか!? ミストさんっ!」
「……ぬあっ!」
がばっ、と頭を起こすミスト。意識はあった。頭から血が少し流れたが、強靱な竜の生命力と再生力で傷はふさがる。
「ッ……よくもやりやがったわね!」
「あの。ミストさん、だいじょう――」
とんでもなく酷い打撃を受けたのだ。正直死んでしまったのでは、と恐れていたセイジは、あまりに自然に起き上がるミストに唖然とする。
「ぶっ潰す!」
再び駆けるミスト。ゴーレムには、すでにソウヤとガルが対応していた。
「――爆破!」
ガルが魔法カードを投擲。ミニ爆弾と化したカードがゴーレムにぶつかり、爆発する。しかし魔法カードの威力は、ゴーレムの腕の装甲を崩せなかった。
そこへソウヤが突っ込む。
「ぬおおおおおっりゃあああ!」
斬鉄の一撃を叩き込む。腕で阻止しようとしたゴーレムだが、盾代わりの腕が粉微塵となる。
片腕を失ったゴーレムだが、すぐに残る腕で反撃しようとする。だがそこにソウヤが下から上へ振り上げた斬鉄の二撃がぶつかり、ゴーレムのもう片方の腕も粉砕された。
「もう一丁ぉ!」
盾がなくなったところを間髪を入れずに叩き込む。ゴーレムは吹っ飛び、壁にぶつかったが、まだ動く!
「硬ぇ!」
「だったら――」
飛び込んできたミストが槍を、ゴーレムの頭へと突き立てる。
「その頭を吹っ飛ばしたらどうよ!?」
頭を殴られたから頭にお返し、とでも言うのか。ミストの攻撃でゴーレムの頭が砕けた。
だがゴーレムはまだ動く。周囲から土砂を集めたかと思うと、スパイク型の岩を生成し、ミストとソウヤへと飛ばした。近すぎて危ないので、一度後退。
するとゴーレムはその間に、失った部位を再生させる。
「くそっ、こいつはキリがねえな!」
どこかに弱点はないのか――ゴーレムを観察するソウヤ。ジンが口を開いた。
「おそらく岩の装甲の下に、ゴーレムの心臓ともいうべきコアがあるはずだ。それを叩かない限り、そのゴーレムは倒せないだろう」
「まずは装甲を何とかしないといけないってことか……!」
ソウヤとミストなら、武器で敵の防御を砕くことができる。そこで敵の外装を外したところで、むき出しになったコアを破壊する――この手しかない。
「あとは、動き回られると厄介だな」
「なら、これはどうだろうか?」
ジンが、宙を指で切った。するとゴーレムの両脚が、股の付け根から外れた。
魔法だろうか。しかしその一撃は見えなかった。脚を分断されたゴーレムはその場に垂直に落下し地面に激突。腕をついて態勢を立て直す。
「チャーンス!」
ソウヤ、そしてミストは駆けた。起き上がるゴーレムは両腕がふさがっていて、反撃できない。
「そうりゃあああっ!」
斬鉄がゴーレムの胴体にヒット。持ち上がる胴体、砕ける胸部の岩装甲。ジンの言った通り、宝石――コアが剥き出しになる。
「くぅたぁばれぇぇぇー!」
ミストの絶叫。竜爪槍が、コアを刺し貫き、そして砕いた。その瞬間、ゴーレムの表面や体だった岩がボロボロと砂に代わり、飛び散った。
番人とおぼしきゴーレムを撃破である。
「最後の最後に、面倒な奴がいたな」
ソウヤは息をつくと、コアの欠片を踏み潰しているミストを見やる。
「大丈夫か? 頭、殴られただろ」
「これくらいはね」
ミストは皮肉げに唇の端を吊り上げた。
「油断するなってことね」
他の面子の無事を確認し、遺跡を探索。何か拾い物があれば――そう思っていた矢先だった。
ガタン、と何か重々しい音が響いた。
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