第15話 白虎の質問に答えるのは難しいです
白虎と話していた優気は、自分がギルドの依頼で森に入って来たことを説明し、モンスター達が集めていた薬草を分けて貰えないか頼んでいた。
「ここにある薬草を少し分けて貰いたいんだけど、大丈夫かな?」
「ああ、それなら問題ない。少しと言わず全部持っていってくれ」
「えっと、全部は・・・流石に無理かな?」
山のように積まれている薬草を見て全部を持ち帰るのは不可能だと感じた優気だったが、ふと、アイテムボックスがあることを思い出した。
アイテムボックスを薬草の前で開くと、<<収納しますか?>>という文字が出て来た。優気が、<<はい>>と答えると目の前から全ての薬草が消えてアイテムボックスに収納された。
「す、少しでも多く持って帰れたら良いかなと思ってたんだけど、まさか全部入るなんて思わなかったな」
「はっはっは、流石私の友だな。モンスター達に運ぶのを手伝わせようかと思ったが、余計なお世話だったようだ」
「い、いや、たまたま上手く行っただけだよ。(それよりも、いつの間にか友達になっている事の方が驚きだよ。対等な関係とは言ったけれど・・・)」
いきなり友と呼ばれ困惑している優気に対して、白虎は朗らかに笑っていた。
「優気様、かなりの量の薬草をしまわれたようですが、大丈夫ですか? 体に異常などはありませんか?」
「うん、大丈夫だよ。アイテムボックスに入れたけど、重さは感じないし、体を動かすことも問題ないみたい」
優気は、腕を回したり軽く膝を曲げたりなどして体に問題がないことをアピールした。
「そうですか。ですが、少しでも体に異常があれば教えて下さい」
「うん、ありがとう、カルマ」
「主殿、白虎の調子も回復し、薬草も採れましたがどうしますか? 街に戻りますか?」
「そうだね。達成しやすい依頼だって言ってたし、出来るだけ早くギルドに報告しなくちゃ」
「そうですか、それでは帰りは私の背に乗ってください。来た道は覚えているので問題無く街に戻れます」
早速、シルファが狼の姿になって帰る準備をしていると、白虎から呼び止められた。
「まあ、待て待て、そう急がなくても良いだろう。もう少し、話しを聞いていけ」
「でも、もうすぐで日が暮れてしまいそうだし・・・」
「それなら、私が責任を持って送ろう」
「えっ!? 白虎が?」
「何をそんなに驚いている?」
「いや、だって、白虎が街にまで来たら街にいる人達が驚いて騒ぎになっちゃうよ」
「心配しなくとも、人から見えないようにしておく」
「う~ん、でも~」
「そんなに心配か? さっと行って、さっとまた戻ればバレる事は無いと思うが」
「でも、もし白虎に気が付いて攻撃とかされたら大変だよ。折角怪我も治ったのに」
「何だ? 私の心配もしていたのか?」
「うん・・・あっ、白虎が強いのは分かってるよ。でも、もしもがあったら嫌だから」
「はっはっは!! 本当にお前は面白い奴だな」
豪快に笑う白虎の声が思っていたよりも大きく、優気は一瞬体がビクッとなってしまった。
「ぼ、僕、何かおかしなこと言った?」
「いや、おかしいと言えばおかしいが、お前はそのままの方が良いな」
優気は、不思議そうに首をかしげながら白虎を見ていた。
「優気よ、お前の優しさは素晴らしいものだ。きっと、他の誰にも真似出来るものでは無いだろう」
「あ、ありがとう?」
「その優しさで、私やお前の隣にいる2人のように多くの者が救われるだろう」
「大袈裟だよ」
「だが、その優しさにつけ込む者達もいるかもしれない。手を差し伸べた者に牙を向けられるかもしれない。その事を頭に入れて十分に気を付けることだ」
「うん、分かった」
「それと、もう一つ」
「何?」
「モンスターを倒す事をためらうな」
「えっ?」
「今、この場には私を助けようとしたモンスター達がいる。その存在を知ったお前は、もしかしたら次にモンスターに遭遇した際に攻撃することを躊躇するのでは無いかと思ってな」
「そ、そんなことは、無い・・・と思うけど」
「本当か?」
白虎の確認する言葉にすぐに返事をすることが出来なかった。すでにモンスターを倒したことのある筈の優気だったが、何と答えたら良いのか分からなくなっていた。
それでも、『大丈夫』、『問題無い』という言葉を言おうとしたとき、カルマが優気の前に出て白虎の目を真っ直ぐに見ながら答えた。
「問題ない、仮に優気様が戦え無くなったとしても私が戦えば良いだけのこと。私が、優気様の矛となり盾となる。だから、何も心配はいりません」
「カルマ・・・」
「ふん、お前1人では力不足だ。主殿は私が守る。どのような状況であっても、どんな場所にいても必ず守って見せます」
「シルファ・・・」
「お前達の意思は分かった。さあ、2人の意思を聞いて、優気よ、お前はどうする?」
さっきは、何と答えたら良いのか分からず何も言えなかった優気だったが、カルマとシルファの言葉を聞いて自分の素直な気持ちを白虎に話した。
「正直よく分からない。確実な事なんて何も言えないけど、この気持ちだけは絶対に曲げたくない」
「それは、何だ?」
「大切なものを守りたいって気持ち」
(先程とは違う、真っ直ぐな目をして、自分の気持ちをきちんと伝えに来ている。2人の気持ちに応えようとして出した言葉なのだろう)
優気とカルマとシルファ、それぞれの気持ちを聞いた白虎は、3人を見て、ふっと静かに笑みを浮かべた。
「そうか、その気持ちがあれば大丈夫だろう。悪かったな、変な事を聞いて」
「あ、いや、僕の方こそきちんと答えられないで」
「何か困ったことがあれば遠慮無く言うと良い。全力で力になろう」
「良いの? 白虎がそんな風に協力するなんて言って」
「何、バレなければ問題ないさ。ふふふ・・・」
最後に白虎は、不適な笑みを浮かべ、それを見た優気は大丈夫だろうかという気持ちと心強い友達が出来た事に喜んでもいた。
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