1-77 開戦
闘いが始まる──
10万と3万の観戦者達は固唾を呑んで二人の一挙手一投足を見守る。
二人の向かい合う男の姿は観る者に様々な構図を思い巡らせる。
『オーガ』対『人間』
『魔王軍』対『フランシア軍』
『魔王軍四天王』対『神が宿りし者』
『悪鬼』対『鬼拳』
そして───
『最強』対『最強』とッッッッッッ!!!!
誰もが直感する、二人の勝敗がこの戦争の勝敗に直結していると──
誰もが確信する、二人の勝敗が歴史を左右するほどの重大な結果をもたらすことをッッッッッッ!!!!
高まる緊迫と緊張の中最初に動いたのはゾルトラであった。散歩の続きかのようにダリルの方へと歩みを再開する。
これに対しダリルも何かを察したかのように歩み始める。
まるで引き合わせるかのように無造作に距離を詰める両雄、その距離僅か30センチッッ!
不自然な程の超接近ッ!!!
誰もがこの謎の行動に困惑するが、唯一ゾルトラが引き連れてきたオーガの若人とベロニカだけはこのデジャブの様な光景を見て直感する。
「だ、ダリルさん···· まさか····!?」
その直感は正解であった。二人はまるで事前に打ち合わせしたかのように右腕を後ろへと弓を引くように振りかぶると───
同時に互いの拳を無防備な左頬へと叩きつけるッッッッ!!!!!?!?
肉撃つ音は1キロ先の城壁上にいるフランシアの戦士まで鮮明に届きッッ!!!
発生した爆風は近くの観戦していた魔王軍の戦士をも吹き飛ばすッッ!!!!
これこそが開戦の合図ッッッッ!!!!
人知れず行われた『アレウス』対『ブレイド』に続く巨星激突第二段ッッッ!!!!
その火蓋は今ここに切って落とされるッッ!!!!
「「ッッ!?!?」」
両者、今の実力を相手に知らしめるべく放った右拳の一撃は互いの想像を遥かに超える衝撃を左頬に迸らせながら踏ん張りの効かなくなった二人を吹き飛ばすッッッッ!!!!!
「ッックソがッッ!?!」
「ッチッ!?」
共に20メートル程度距離が開いた地点で着地する。この時ダリルは戦慄していた、ゾルトラの実力の底無しさにッ!
(ゾルトラめ····· やはりココネオ村では手を抜いてたか······ッ!)
しかし、同様にゾルトラもこの時愕然としていた、ダリルの成長スピードにッ!
(ふざけんじゃねぇぞダリル·····ッ! 二週間そこらでお前どうしてこんなに強くなれるんだよッ!)
たが一流の戦士でもあるゾルトラはこんなことでは揺るぎはしないッッ!!
直ぐ様ダリルに追撃を加えるべく構えをとるが───
「なッッ──!?!?」
ゾルトラの顔面へとめり込むダリルの左膝ッッ!!
先手を取ったのはダリルッッ!!! 繰り出した技は神速の飛び膝蹴りの『瞬撃』ッッ!!!
意識外の一撃はかつて感じたことの無い振動でゾルトラの脳を揺らし体を大きくのけ反らせるが──
(ッ~馬鹿なッッ!!)
それでもゾルトラは倒れずッ!! オーガは両足の10本の指で大地を掴むかのように踏ん張りを効かせると──
「今のは効いたぜダリルッッッッ!!!」
のけ反った体を戻すかのように逆襲の右ストレートをダリルへと撃ち込んだッッ!!!
「ッッッッ!?!」
ダリルはこれを両手で防いたが、まるで体全身に電気を流れるかのように規格外の衝撃力を体感するッッ!
やはりこのオーガの男は桁違いッッ!! 先程までのフラストレーションの反動かダリルはかつて無いほど滾り散らしていたッッ!!!
「流石だなゾルトラッ! ぶつけさせて貰うぞ、俺の全てをなッッ!!!!」
ダリルは叫びゾルトラへと喊声するッッ!!
「上等だ!? 来いッッ! ダリルッッッッ!!」
一方のゾルトラもこれを受け入れ二人は超接近戦による拳と脚の撃ち合いを始めるッッッッ!!!!
飛び交う汗と血潮ッッ!!! 鳴り響きわたる互いの肉をうつ殴打音ッッ!! 震える空気と大地ッッ!!!!
闘い最序盤にも関わらず唐突に始まった両雄の殴り合いは観るもの全てをざわつかせ熱狂させたッッッッ!!!
素人目からみても互角ッッ!! オーガ最強の男ゾルトラと対等に戦うダリルの姿はフランシアの戦士達を大いに盛り上げるッッ!
「す、すごい! プルムちゃん、ダリルは勝てるよね!」
プルムの両肩を掴み興奮気味に問い掛けるマリー、しかし当のプルムの表情は険しく─
「·····いや、相棒の方が劣勢だな····」
両陣営の実力者の見解はプルムと同じだった。特にダリルの拳をその身で味わったガナードと、隠れながら観戦していた謹慎中のドレファスは戦慄していた─
「·····チッ! 死にたくなるぜ····· クソみたいに重いダリルの拳をまともに受けてピンピンしている奴がこの世にいるなんてよ·····」
共に殴り殴られをしているかのように見えるが実際は大きく違う。
ダリルは体を捻ることでゾルトラの攻撃の打点をずらし、いなすことで見た目以上のダメージは入っていなかった。
しかし、ダリルの攻撃は修練の成果もあり、ほぼ全て正確にゾルトラの急所を捉えることに成功していた。
にも拘らずゾルトラは倒れる兆候どころか、攻撃の手を緩めることすらないッッ!!!
これは冷徹な事実を現していた──
強靭な肉体を保有し、理合で高めたダリルの拳をもってしてもゾルトラを倒し得ないという事実をッッッッ!!!
(大した威力だなダリルよぉ····· だが俺に膝着かせるには、まだまだ馬力不足だぜ·····ッ!)
ゾルトラはダリルの成長を称賛しつつも、全力で潰しに懸かるッ!!!
一方のダリルは、早くも万策尽きた──
(───とか何とか思っているんだろ? ゾルトラッ! お前にただの打撃が通じないなんて最初から知ってるんだよ·····!)
筈もなくッ!
ダリルとプルムの予想通りに進む戦況ッ!!!
プルムは思惑通りの状況に不適な笑みを浮かべる。
(『今』は押されてはいるが、悪くない滑り出しだ····· このまま行けば勝てるぜ、相棒)───
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