1-40 開花
赤黒くロベリアの呪印装術の魔方陣が輝き始めるその範囲を広げていく。それはダリルに対する憎悪が彼女に無限の力を与えている証拠であった。
僅かな睨み合いの後、最初に駆けたのはダリルッ!!
ロベリアの槍の間合いはダリルのそれの倍ほど、それゆえに男は先手をとるように距離を詰め猛攻を仕掛けるようとする。
ロベリアはこれを横薙で対応しようとするが、ダリルは前進しながら大きくしゃがみ込むことでこれを回避ッ!!! 間髪いれずに屋根が破砕されるほど強く踏み込み、彼女の顎目掛けて掌底を放つが、
「ッチ!?」
まるで陽炎に打ったが如く、ロベリア通り抜ける掌底。そしてダリルを襲うのは右肩に突如走った『熱さ』、そして次にやってくる『痛み』であった。
ダリルは目にしたッッ! 気付かずに自分の右肩に刺さっている槍先とその使い手で不敵な笑みを浮かべるロベリアの姿をッッ!!!
(さっきのも幻術ッッッ!! 距離感をずらしてきたか·····!)
ダリルは刺さった槍を引き抜くように後退するが、ロベリアは自身の間合いを維持したまま五月雨突きを仕掛ける。
ダリルはこれを残った左腕のみで捌こうとするが全てを防ぐことはできず、右太股と左脇腹に深い切り傷を受けてしまう。
右腕と右足を実質的に失ったダリル、これは攻撃手段を機動力を大きく制限されたことを意味する·····
だが!! ロベリアはそれでも追撃の手を緩めることはなく、それどころかさらに激しく攻めあげるッッ!!
直線的な突きに加え、左右上下の薙払いによる斬撃と突発的に発動する幻術による認識のズレは男を確実に追い込み始めていた。
(あの女『上手い』ッッ!! 身体能力全般では呪印装術で強化されているとはいえ、未だ相棒の方が遥かに上のはず。だが虚実入れ混ぜた攻撃でダリルを翻弄し、決して捉えさせようとしない····· 恐らくロベリアの戦闘センスに限ってはダリルの上、そしてたったそれだけで対等以上に戦っていやがる····! いつまで『抑えている』つもりだ相棒、このままじゃ本当に·····)
ロベリアのこの高い戦闘センスは生来の物であった。勇者パーティーとしての黒狼騎士団の快進撃もアストロの活躍というよりは彼女の寄る処が大きい。
しかし、どれ程高い戦闘センスを持っていたとしても所詮ロベリアは人間の女····· いくら鍛えても貧弱なままの肉体ではその才能は宝の持ち腐れであった·····
はずだったッッ!!!
神の意志か悪魔の誘いかは分からないが彼女は『力』を得たッッッ!!
そして突出していた戦闘センスに追随し得る肉体を手に入れたロベリアはその才能を存分に発揮し、今まさに『開花』の時を迎えようとしていたッッッ!!!!
(ッッ!? 早くなっただけじゃない!? 攻撃パターンも変えてきただとッッ!!)
光速が如くロベリアが操る短槍は爆風を発しながら、まるでしなる鞭のように不規則な軌道を描き始め、ダリルの五体全てを襲い始める!!
機動力を失った男は次々と斬撃を受け、無数の傷からは噴水のように血潮が吹き出す──
このままでは致命傷を受ける前に失血で死ぬのは火を見るよりも明らか──
一転、窮地に追い込まれた男に残された時間は幾ばくか──
この死闘に観客が入れば誰もがダリルの敗北を確信しただろう──
だがしかしッ!!!
唯一の観戦者、プルムの見解は違うッッ
「!? やっと来たか!! そうだ抗わずに解放しろッッ!!」
プルムはそれを見て叫んだ。強敵と闘いによって体に刻まれし魔方陣······
それは『神が宿りし者』である証·····
(? ダリルの体から私と似たような魔方陣が···· 関係ない、このまま押し切るッ!)
そして彼らは、
(!?!?? なっ拳ッ!? 重ッッッ!??!)
あらゆる強敵を超越するッッッ!!!!
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