1-35 和平の使者
カルミア元王女の登場により謁見の間にいる一同の混乱は更に加速するが、
「カルミアッッ、ここを何処だと心得るッッッ!! 今の貴様が来て良い場所なのではないのだぞッ! それに後ろの奴らはなんだ、反乱に加わった勇者達ではないかッ!!」
国王の迫真の怒号は同席者達の動揺を静めた。しかし等のカルミアはこれに物怖じせず堂々と返答する。
「父上、確かに私は王位を剥奪された身···· 招待もされていない私がここに来ること自体筋違いであることは重々承知しています」
「!! それが分かっていながら何故───」
「されどッッッ!! されど私は自分を未だに王家の人間だと勘違いして来たわけではありません····· 此度は魔王陣営の依頼により公平な和平仲介人としてこの場に来た次第でございます」
「魔王から和平だと!? それは真か!」
今まで冷静沈着だった国王もこの予想外の申し出に声が裏返ってしまう。
「そうです父上、そして後ろに控える黒狼騎士団こそが此度の魔王殿から和平の親書を預かり派遣されてきた使者でございます」
アストロはカルミアの前へ出てると丁寧にお辞儀し、語り始める。
「御初にお目にかかります国王陛下、此度は魔王様より親書を預かりましたアストロと申します。よろしければこの親書、陛下に直接お渡ししたいのですか宜しいでしょうか?」
「うむ、近くに寄るが良い」
アストロは玉座に向かうためダリルの横を通り過ぎるようとすると小声で何かを耳元で囁やく。
(?·····何が目的だアストロ···)
プルムは小声でダリルに話かける
「······いいのかいダリル? このまま和平が成立して両方軍が引いたらゾルトラとの決着はつけられないかも知れないぜ」
「お前こそ良いのか? 知っているんだろ魔王の、フレイアとやらの本性を·····」
「何を言ってるんだか、ラブ&ピースだよダリル、平和が一番さ。それにこれが騙し討ちでフランシアが滅びようとオレの目的には関係ないしな」
「ふん、お前もそういうことか··· ゾルトラは四日後にはここ王都に俺との決着をつけるため必ず来るッッ! 彼奴はそういう男だッ!! むしろ和平が成立した方が邪魔立てを心配する必要がないから好都合だしな」
「へえ~、随分と固い友情で結ばれていることで」
アストロから受け取った親書に目を通した国王はダルランに命令を飛ばす。
「ダルラン、急ぎ国防会議のメンバーを収集せよ、1時間後に会議を開催するとな! 議題は講和交渉についてだ、分かったか!」
「はっ! 承知致しました!」
国王はカルミア達とダリル達に目を向ける。
「カルミア、及び使者殿達はそれぞれこの王宮に別室を用意するため待機して頂きたい。宜しいな」
「承知致しました、父上」
「それとダリルよ、申し訳ないがお主の願い事叶えらねぬかもしれん。しかし、恩人であることには代わりがない故に別の形で礼はするつもりだ!」
「·····分かりました、陛下····」
こうしてダリル達の謁見は混乱も冷めぬまま閉幕するのであった····
──謁見終了直後、王宮の廊下にて
「カルミア元王女には驚ろきましたね、まさか裏で和平工作を進めていたとは······」
ストレリチアは無気力な口調で横を並び歩くベルモントに話かける。
「あの方も権力の中枢に戻りたくて必死だったからな。しかし、此度の和平が成立すれば王位復帰も夢ではなかろうてな」
「何が目的でそこまで偉くなりたいんでしょうね? 責任ばかり増えて面倒なだけなのに」
「もしかしたら復讐かもな····· 10年前、自分の無実を信じてくれなかった父と、自分を告発した妹に対してな」
「そのために10年も堪え忍んだと言うんですか? そんなの私なら諦めるのに·····」
「フッ、皆がお前みたいに強い存在ではないのだよストレリチア····· 何にせよ彼女には警戒しておけ、大分前にあの方の心は『壊れて』いるからな······」
「警戒と言えば、黒狼騎士団の連中もですね··· 見たところ一人『別格』がおりましたね、衛兵達を反撃させずに制圧したのが頷けます。それに·····」
「それに何だストレリチア?」
「感じませんでしたか団長? その人物が発する異常なまでの殺意を、しかも複数の相手に向けてね」──
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