1-31 魔王と災厄の子

「なんだよその言い草は····· 一時期は相棒同士仲良くやっていたじゃないか! 素直になりなよ~プルム」


「ッッ!? 相変わらずアンタは勘に障る野郎だな! アンタの事を相棒なんて一度も想ったことなんてなかったよフレイアッッ!!」


余りにも温度差のある二人の対面、プルムは早くも一度取り戻した冷静さを失いかけたがダリルとの約束を思いだし少しヒートダウンする。


「·····アンタがここに来た目的はダリルか? 相棒が『神が宿りし者』である可能性に気がついてここに·····」


「何だって? 相棒? もうそんな仲良しになったのかい! 僕とは全然違うんだね?」


「!? 質問に答えろフレイアッッ!!」


冷静になりかけたプルムにフレイアは嘲笑うかの様に怒りの燃料を追加していく、この二人の関係性は険悪を越えてより最悪であることは第三者が見ても明らかだった。


「ごめんごめん! ちょっと妬いただけさ~ その質問の答えはイエス! ゾルトラさんが手を抜いてたはいえど、殴り倒した相手だよ? しかもこれが短期間で強くなった人間と来れば、そりゃあ『神が宿りし者』である可能性疑っちゃうでしょ普通~」


「そして心の弱味につけこみ、手駒にするってか? アレウスの時みたいにな!」


「·····君は何か勘違いしてるようだけど、僕とアレウスさんはそんな浅い関係じゃないからね?」


フレイアの口調と態度は相も変わらず飄々としていたがその言葉には若干怒りが込められていた。しかしそれも直ぐに引っ込ませる。

 

「ま、そんなことより丁度良かったよ、君が来てくれ!」


「何だと、そいつはどういう意味だ?」


「彼、王都でゾルトラさんと再戦するつもりなんでしょ? それを止めて欲しいんだよね~」


「····今のダリルじゃあ、殺されちまうからか?」


「おっ、流石僕の元相棒! そうなんだよね~ 今の彼じゃあ万に一つでも全力のゾルトラさんに勝機なんてないからね」


その言葉を聞いたプルムは乾いた笑い声を路地裏に響かせる。


「·····あれ? 僕なんか変なこと言ったかな?」


「クククク、すまんすまん。お前も随分と見る目が堕ちたと思ってな·····!」


「何だって·····?」


「ゾルトラに殺されちまう? バカいってんじゃねえよフレイア! あいつはそれ程度の男じゃねぇし、そもそもオレがそうはさせねえよ!! あいつは、いずれはお前ご自慢のアレウスですら越える逸材だからな!」


プルムは決してハッタリを言っているわけではなかった。出会ってからの月日は短いと云えど、彼が生きてきた長い人生の中でも見たことのない程の可能性を見出だしていたのだ!


「随分と彼に入れ込んでいるらしいね····· ま、忠告はしたから、死んでも恨みっこなしだよ。じゃあね、プルム」


そう言うとフレイアは片手をふって路地裏の奥へと消えていった·····


路地裏に残されたのはプルム一人··· 否


「過保護なのか覗き好きなのかわからないが話は大体聞いていたな? ダリル」


プルムの後ろの建物の角にはダリルが両腕を組みながら寄りかかっていた。


「·····ああ、大方はな」


「それじゃあ話が早い···· 急いで王都に行くぜ。そして残り時間でアンタをゾルトラに勝てるようにする!! 時間も少なえから多少の無理はするが覚悟はできてるかい?」


その問い掛けに対してダリルはフッと笑い返答する。


「元よりそのつもりだッッ!! 頼むぞ、相棒ッッ!!!」



─魔王軍、王都到着まで残り5日!!

















「あ、そろそろ皆心配していると思うから連絡するか」


フレイアはポケットから通信水晶を取り出し、話かける。


「ハロー、アネモネ心配してた? そろそろそっちに戻るから···· え、ゾルトラさんがキレてるって? 参ったな~やっぱり戻るの止めようかな~ うそうそ冗談、流石に戻るよ! あと、例の計画進めるように王都の協力者に連絡してくれないかな? 助っ人としては『黒狼騎士団』辺りがいいかな、一人仕上がっているのがいるしね! じゃ、また連絡するね~」



がっ、しかし!! この時に起きていた『歴史的大事件』の知らせを後に聞いた魔王は王都に向かって進撃を続ける本隊に合流することはなく、エベリア半島バルセラにある魔王軍前線拠点へと戻るのであった。



そしてこの『歴史的大事件』によってフランシアと魔王、そしてダリル達の運命が大きく変わるとは、まだ誰も知る由はなかったのである──

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る