第96話 八極戦士の帰還
「あらあらノアちゃんのお友達ね。聞いていますよ」
ノアの母親の出現にルナは「……」と無言になかった。 そうかと思うと――――
「か……」
「か?」
「可愛い!」といきなり抱きついた。
「この子誰? ノアさんの妹?」
「あらあらあら……」と流石にノアの母親も困った顔をしている。
「えっと……うちの母です」
「え?」とルナは頬擦りをしている状態で停止していた。
「えっと、この可愛い女の子がノアの母親ですって? いくら何でも……私たちより年下でしょ?」
「いいえ、少なくとも20才近くは年上です」
「……」とルナは母親に一礼して、距離を取った。それから――――
「し、失礼しました!」と土下座でもしそうな勢いで謝罪を始めた。
「いやいや、良いのよ。ノアちゃんより年下と思われてママは嬉しいくらいよ」
カラカラッと笑う母親。それから娘の方をみて――――
「ノアちゃん、何か言う事があるんじゃないかしら? 何か忘れている事は?」
「え? ……あっ、ただいま」
「はい、お帰りなさい」
それから、こう続けた。
「ノアちゃん、今日は貴方の帰省に合わせて懐かしいお客様もいらしていますよ」
「え? ま、まさか」とノアは駆けだしていた。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
そこには美しいエルフが茶を口にしていた。
「先生! 帰ってきていたのですか!」とノア。
「おぉ、久しいな」とエルフは無表情で返す。
彼女を知る者だけは、その機嫌の良さがわかるだろう。
走り去って行ったノアを追いかけて来たルナは――――
「えっと、どなたですか?」
「はい、ノアお嬢様の師匠になる方です」
「あの人がノアの師匠」とゴクリと喉を鳴らす。
「あの人の影響でノアさんが猪突猛進の武術脳になってしまったのですか!?」
「いえ……否定はしませんが」とメイドリー。
「付け加えるに彼女は李書文先生。御覧の通り、女性のエルフですが、なんでもノアさまと同じく異世界から転生した者だそうです」
「う~ん 私は、ほら……教会関係者だから、本当は異世界転生って認めていい立場じゃないのだけど、実際にあるの? 武術家とか魔法使いとか、箔をつけるために自称とかしているのではなく?」
「ルナさまはノアさまが異世界転生者を自称している事に半信半疑なのですか?」
「確かにノアさんは特別な人間……というのはわかります。でも簡単に信じるのは……」
「わかります。でも、もっと転移系魔法が進化をしていけば、いつかノアさまがいた世界にも――――」
「ところで2人は何をしているのかしら?」
「はい?」とメイドリーは視線をノアと李書文へ戻した。
両者は立ち上がり、同じ構え。前に出した片手を重なり合わせている。
「異世界での挨拶かしら?」
「違います。あれは塔手……ノアさまと書文さまの武術は、あの形から組手を始めます」
「組手……戦うの!? 今から!」
「おそらくは、いえ始まりました!」
最初に動いたのはノアから、
重ね合わせた片腕。それを滑らすように肘を師へと叩きこんだ。
「ほう……見事だ、ノア。功夫を重ねたな」
「――――っ!(吹き飛ばすつもりで打った頂肘が効いてないッ!)」
「では、次はこちらから――――」
「させません!」とノアは続けて書文を崩し――――合気による投げを放った。
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