第44話 反則負け? ゲッツの狂乱
ノア・バットリッチと鉄腕ゲッツ。
2人は向かい合い試合が始まる。その前に――――
「
ノアが指摘したのはゲッツの右手だ。彼の右手は義手……鉄腕の異名の通り、鉄でできている。
「おいおいおい、俺っちはこれで戦い続けて来たんだぜ? 今更、卑怯なんて――――」
「それは、今まで相手が純度の高い武道家だったからでしょ。私は、一向に構わん……なんて言わないよ」
「なんせ――――」とノアは続ける。
「私本来の属性は悪役令嬢だからね」
「何をわけのわからねぇ事を……」と悪態をつくゲッツであったが、その間も審判団による確認が行われた。
「え―――審判団による審議の結果、ノア選手の申し出通り、鉄腕ゲッツこと、ゴットフリード・フォン・ベルリヒンゲンの義手使用は反則といたします」
「おいおい、マジかよ」をピクピクと顔を歪めながら、義手を外して審判に預ける――――
「審判、義手の接合部分、ゲッツの腕の方に魔法とか仕込まれてないか?」
このノアの発言には、試合会場がざわつく。
「離せ!審判ども! 借りにそうだとしても魔法の使用は合法だろうが!」
確かにゲッツの言う通り、試合中の魔法使用は認められる。とは言え……事前に体に魔力を仕込んで戦うのはありだろうか?
いや、ダメだろう。 審判団だけではなく、大会関係者も集まり審議に加わる。
少し長い時間が経過して、審判を残して大会関係者たちは会場からでていく。どうやら結果が出たらしい。
「前例はないとは、ゲッツ選手の行為は悪質として――――」
反則負け。戦わずしてノアは勝ち抜いた。 だが、その結果に待ったとかける人物がいた。
「いいよ。別に反則負けにしなくても――――そう対戦相手の私が言っているんだ」
ノア・バッドリッチだ。彼女は、ここまで場を荒らしに荒らしててから……私は一向に構わんと言わんばかりの態度になっていた。
「いやいや、ノア選手。例え、相手の貴方が良いとしても我々は――――」
審判は最後まで口にできなかった。 ゲッツに突き飛ばされたからだ
「どけよ、くそ審判が。大会なんて知った事か。ただ、この場所で2人の喧嘩が始まるだけだ。それが目的で因縁をつけてきたんだろ? なぁ? ノア・バッドリッチちゃんよ!」
「あらやだ……」
「なんだてめぇ! 今更、上品ぶっても吐いた唾は飲み込めないぜ!」
「いえいえ、ちょっと計算通りに思惑が進んでビックリしただけです」
ブチブチと血管が切れた音がした。 流石に「大丈夫ですか?」と心配したノアだったが――――
「いや、気にするな。怒りが通りすぎて冷静になった」
顔からは表情というものが抜け落ち、能面を連想させる。
しかし、その剣呑な目はそのままだ。
「OK 審判。 いいだろ? 相手の了承も取れているんだ」
「だが、しかし……」と審判は言い淀む。
「この試合、俺の負け扱いでいい。けど、試合は成立させねぇと不戦勝なんて客は不満だろ?」
今度は客を煽り始めるゲッツ。 普通は、それで試合が成立するはずもない。
だが、ノアはそう思わなかった。
(彼の本質は悪。だから、私にはわかる。魂が別人になっても存在が悪として生まれた私には――――彼が持つ狂乱。 それは感染する能力と呼べるほどの感情)
そして彼女の予想通り――――
「「「ゲッツ! ゲッツ! ゲッツ!」」」
観客を味方につけた大歓声を背を受けたゲッツ。
彼の顔、消えた表情に笑みの灯が宿った。
やはり、その笑みは人を惑わし狂わせる狂乱というものが付いている。
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