第1617話 人魚の住み処へ
──ハイ、完成っと!
水輝館の下に体育館くらいの空間を造り、クレイン湖へ繋ぐ転移結界門を設置した。
「人魚のメイドさんたち。クレイン湖での世話を頼むよ」
なんの素材で作られてるか知らねーが、なにも水ん中でもメイド服じゃなくてもよくね? なんか決まりでもあんの?
「畏まりました」
「あ、絶対、水輝湖から直接クレイン湖に連れ込むなよ。必ずここを通すんだからな」
病気や風土病を持ち込まれたらたまったもんじゃねー。花人族で病気を食ってくれるヤツいねーかな?
「はい。徹底させます」
地下水室から伸ばした階段を昇って玄関に上がった。
「人魚が上がれる筒を作るか」
前に水族館で見た筒、あれがあると人魚のメイドが上がって来やすいだろうよ。あらよっとで追加しておく。
「べー。終わったか?」
食堂に向かうと、皆さんが集合していた。
「なんだ、待ってたのか」
造るのに三時間はかかったのによ。
「待ってないとお前はそのままいなくなるからな」
否定はしねー。いなかったら帰ってたし。
「メイドさん。コーヒーちょうだい。あと、なんかあっさりした食い物もよろしく」
ちょっと小腹が空いたよ。
「では、ポテトサラダパンをお持ちします」
ポテトサラダパン? なんじゃいな? と思ったらカレーパンのポテトサラダバージョンだった。
「ポテトサラダを詰めて油で揚げるとかよく考えたな」
食べみたら意外と旨い。そう濃くもねーし、これからもう一個イケそうだ。
「ごちそーさん」
コーヒーでシメてお口さっぱり。腹もイイ感じに膨れたぜ。
「それで、これからどうするんだ?」
「んーそうだな。ちょっと人魚が住んでるところでも見にいくか」
もう人魚の生活にそれほど興味はねーが、なんか宇宙的なにかがあるかもしんねー。回収できるなら回収しておこう。決して火事場泥ではないのであしからず。
「バイブラストとしては関わる気はねーんだな?」
「ない。と言うか、問題が大きすぎてどうにもできんわ。このままでは中央にも飛び火する」
事なかれ主義かよ。まあ、オレも見て見ない振りができたらそうするけどな。面倒でしかねーし。
「そうかい。公爵どのがそう決めたらオレに異論はねーよ」
公爵どのの苦労もわかる。無責任な! とかは言わねーさ。
「メイドさん。カイナーズホームからウェットスーツを買っておいて。明日の朝、人魚が住んでたところにいってみるからよ」
「おれのも頼む」
と、公爵どのが割り込んできた。なによ、突然?
「おれも人魚の住み処を見ておきたい」
「関わる気はねーんだろう?」
「ない。だが、お前を見ていてもう少し他種族を理解する必要はあると感じたんだよ」
「いや、普通に他種族と交流してんじゃん」
魔大陸でやったレースで魔族と楽しくやってたでしょ。
「まあ、本音は見てみたいだけだ。星の世界から来た種族なんだろう? なら、バイブラストとなにか関係あるかもしれないからな」
そういや、バイブラストの地下も異常なところであり、飛空船リオカッティー号、宇宙船型だったっけな。
「まあ、好きにしたらイイ」
別に人魚と戦いにいくわけでもねーしな。ヤバかったらさっさと逃げてくりゃイイだけだ。
明日のためにオレは先に休ませてもらいます。
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